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日本の宇宙開発の将来背負って打ち上げ

科学編;村山知博記者(朝日新聞科学部)

ジャン

もうすぐロケットが打ち上げられるそうね。

村山記者

最新の国産ロケット「H2A」のことだね。今月25日に、鹿児島県の種子島宇宙センターから、初めて打ち上げられる予定さ。直径4メートル、高さは17階建てのビルと同じ53メートルもあるんだ。

ポン

そんな大きなロケット、ちゃんと打ち上げられるの?

村山記者

今回の打ち上げは、日本の宇宙開発の「これから」がかかっている。ロケットをつくった宇宙開発事業団などは今度こそ成功させなくてはと、念には念を入れて準備しているよ。

安さで外国製に対抗 強敵は欧州「アリアン」
朝焼けの空をバックに立つH2Aロケット。打ち上げのときには、頭の部分に「フェアリング」とよばれるカバーを取り付けます=鹿児島県・種子島宇宙センターで

ケン;日本のロケットって、最近、話題になってないよね。

―1998年と99年に先代の「H2」ロケットがつづけて失敗して、しばらく打ち上げていなかったからね。

ジャン;名前は似ているけど、H2とH2Aにちがいはあるのかしら。

―見た目はそっくり。でも、H2Aの中身はずいぶん新しくなっている。なるべく単純なつくりにして、打ち上げにかかるお金も、ほぼ半額の85億円におさえている。

ケンなぜ、そんなことをしたの?

―理由はふたつある。まず、値段を安くしないと、外国のロケットに商売で負けちゃうからさ。

ポン;ロケットって商売に使うの?

―ロケットは、人工衛星を宇宙へ運ぶのが役目。衛星をつくった人が、ロケットの会社にお金をはらって打ち上げてもらうわけさ。お金がかからないロケットの方が得でしょ。

ケン;H2Aにもライバルがいるんだ。

―うん。いちばん強いのはヨーロッパの「アリアン」。世界の商業衛星の半分近くを打ち上げている。ロシアの「プロトン」やアメリカの「アトラス」も手ごわいよ。

ジャン;H2Aは勝てるかな。

―85億円という値段そのものは、10分通用すると思う。ただ、安くても、失敗ばかりのロケットは敬遠されちゃう。

ポン;どういう意味?

―発射したロケットが途中でトラブルを起こすと、安全のために、地上から信号を送って爆破し、海に落としてしまうケースもある。高いお金と長い時間をかけてつくった衛星を、みすみす海のもくずにはしたくないでしょ。

ジャン;そうね、信頼できるロケットの方がいいわね。

―この点でも外国のロケットはすぐれている。アリアン4型ロケットは、104回も打ち上げて、3回しか失敗していない。外国の一流ロケットの打ち上げ成功率は、平均で95パーセントだよ。

ケン;優秀だな。

部品減で防ぐトラブル 成功しないと遅れちゃう

 

―中身を新しくした、ふたつ目の理由は、トラブルを防ぐことさ。部品が多ければ、トラブルが起こる可能性もそれだけ高まる。H2Aは、部品の数を2割もへらしている。

ポン;じゃあ、だいじょうぶだね。

―10回くらい打ち上げないと、信頼性はわからないと思う。ただ、外国のロケットは初めての打ち上げのとき、70パーセントしか成功していないんだ。

ジャン;H2Aも今回がデビューでしょ。もし失敗したらどうなるの?

―うまくいかなかった原因をつきとめ、それを見直したりするのに時間がかかって、何年もロケットが打ち上げられなくなるだろうね。

ケン;その間に外国ロケットとの差が、広がっちゃう。

―もっと深刻なのは、日本の宇宙開発計画が大きくおくれること。月をまわる衛星や情報を集める衛星の打ち上げなど、H2Aなしでは成り立たない計画が多い。今回、成功するかどうかが、日本の宇宙開発の「カギ」をにぎっているといえるね。

 
中国
ロシア
欧州
米国
日本
運用開始年
1996
1965
1988
1996
1998
2000
1989
1994
2001
(予定)
静止遷移
軌道打ち上げ能力

(トン)
4.5
5.5
4.9
6.0
3.8
4.0
5.8
*静止
軌道
4.0
4.0
標準的な 打ち上げ
価格

(億円)
84
84
78〜132
144
102
108〜126
300〜480
140〜195
85
打ち上げ数
64
283
137
282
177
208
7
-
成功率(%)
89
88
94
94
90
92
71
-
AW&ST誌と宇宙開発事業団の資料から。打ち上げ価格は1ドル=120円で換算。日本のロケット以外の打ち上げ数と成功率はシリーズ全体で集計(2000年6月1日現在)

(2001年8月18日)


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