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中国、有人宇宙飛行に成功

上田 俊英記者(朝日新聞科学医療部)

ジャン

 中国が有人宇宙飛行に成功したんだってね。

上田記者

 楊利偉飛行士が乗った有人宇宙船の「神舟5号」が15日に打ち上げられ、地球を14周して帰ってきた。

ケン

 すごいことなの?

上田記者

 これまで、人間を宇宙に送れる国はロシアとアメリカだけだったんだ。両国の初飛行は一九六一年だったから、42年ぶりに、やっと3番目の国があらわれたことになるね。

ポン

 日本も挑戦しないの?

 信頼性高いロケット、難しい回収もクリア

 ジャン 人を宇宙に送るってむずかしそう。どんな技術が必要なの?

「神舟5号」の宇宙飛行の想像図(人民日報電子版「人民網」のホームページなどから、朝日新聞社作製)

 ――安全なロケットと、宇宙船の中を地上と同じ環境にたもつ「生命維持システム」。それに、地球にもどるための「回収技術」といわれている。

 ケン 中国のロケットは安全なの。

 ――中国のロケットの長征は29回連続で成功中だ。とびぬけた技術は使っていないが、信頼性はとても高い。  

 ポン 地球にもどるのもむずかしいの?

 ――宇宙飛行中に人が亡くなった事故はこれまでに4回あったけど、うち3回は地球にもどるときに起こった。ことし2月にもアメリカのスペースシャトル・コロンビアが空中分解して、7人が犠牲になっている。

 ジャン どうして事故が起こりやすいのかしら。

 ――地球にもどるとき、宇宙船の表面は空気との摩擦で2000度前後にもなる。燃えないようにする工夫がむずかしいんだ。

 ポン ところで最初に宇宙に行ったのはだれだったの?

 ――ロシアがソ連という名前だったころのガガーリン飛行士だ。61年4月12日に約1時間48分で地球を一周して、「地球は青かった」という有名なことばをのこした。

 ケン 月にも人が行ったことがあるって聞いたんだけど。

 ――アメリカのアポロ計画だね。当時、ソ連とアメリカははげしい宇宙開発競争をしていて、有人宇宙飛行で先をこされたアメリカは月面着陸でぬき返そうと必死だった。そして、69年7月20日、アポロ11号のアームストロング船長らが月面に降り立った。アポロは72年までに計6回、月に行ったんだよ。

 ジャン ロシアとアメリカは、いまでも競争しているの。

 ――いや、ロケットや宇宙船の開発には、お金がたくさんかかる。だから、みんなで協力して国際宇宙ステーションをつくることにした。98年から建設が始まっている。

国際宇宙ステーションの完成イメージ(写真提供:ESA/ducros)

 ケン どんな国が参加しているの?

実験モジュール「きぼう」
 日本が初めて開発した、宇宙にうかぶ実験室。国際宇宙ステーションの一部になります。最大4人の宇宙飛行士が同時に活動でき、新しい宇宙技術の開発、宇宙で安全にくらす情報をえる場所として活用されます。
 きぼうは2006年から、各部を3回に分けてアメリカのスペースシャトルで打ち上げられる予定でしたが、ことし2月のスペースシャトル・コロンビアの事故の影響で、打ち上げ時期がおくれそうです。

 ――アメリカ、ロシア、日本、ヨーロッパなどの計15か国だ。日本は宇宙でいろいろな実験をする施設「きぼう」(メモ参照)を建設することになっている。

 ジャン 完成したらいろいろな国の人が宇宙に行けるようになるんだね。中国も協力しているの?

 ――それが、いまは参加していない。今後、どうするのかが注目の的だね。

 ポン ねえねえ、日本だけの計画はないの?

 ――日本のH2Aロケットも長征におとらない性能がある。2005年には月の近くまで探査機を送り、上空から月をくわしく調べる予定だ。宇宙のなぞをさぐる科学衛星も定期的に打ち上げる。科学衛星は日本の得意分野なんだよ。
 十月からは、国の3つの宇宙研究機関(宇宙開発事業団、宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所)をいっしょにして、宇宙航空研究開発機構(JAXA)をスタートさせた。研究の効率をよくするためなんだって。

 ケン どうして有人宇宙飛行に挑戦しないんだろう。

 ――挑戦するには10年間で1兆5千億円が必要とされる。でも、宇宙でやることは、ほかにもたくさんある。気象衛星は天気予報に欠かせないし、通信衛星などがないと、テレビのBSやCSといった衛星放送なんかも見られなくなる。

 ポン それもこまるね。

 ――ただ、日本の計画にも問題があって、何を一番やりたいのかがはっきりしない。中国は92年に有人宇宙飛行への挑戦を決め、優秀な人材やお金を集中して取り組んだ。「日本は無人宇宙技術の頂点をめざすべきだ」という意見もある。無人なら日本の得意なロボット技術なども生かせるからね。

(03年10月25日)


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