山浦 正敬記者(朝日新聞 社会部)
ケンとポンと3人で買い物や遊びに行って、夏休みの楽しい思い出ができたわ。
パパやママたちは心配しなかったかい。
そうなんだ! 「どこに行く」「何時に帰る」って何度も聞かれたよ。なんでだろう。
夏休み前の事件をおぼえているかな。東京都稲城市の小学6年の女の子4人が渋谷に遊びに行って、そこで知り合った男に、4日間も部屋の中に閉じこめられた事件だよ。
小学生がそんなおそろしい目にあったことに、どこの親もおどろいている。じつは、犯罪にまきこまれる子どもたちはふえているんだ。
えーっ! くわしく話してよ。
ことし前半、5年で2000件ふえ約1万3000件
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さかり場は、ゆうわくがいっぱい。よくない考えで子どもに声をかける大人もいます=東京都渋谷区で |
ジャン わたしたち小学生が被害にあう事件はどのくらい起きているの。
――警察庁が全国の警察を通じてまとめたところ、ことしの1月-6月だけで12.768件起きた。1998年1月-6月にくらべると、5年間で約2000件ふえている。警察に被害届を出していない事件もあるだろうから、本当はもっとあるはずだ。警察庁は、小学生や、もっと小さな子どもたちの被害がふえていると心配しているんだ。
ケン どんな事件にまきこまれているのかな。
――85パーセントはぬすみの被害だ。自宅や駅、公園で、置いていた自転車をだれかに持って行かれた子もいるんじゃないかな。お金や人気のカードなどをおどしとられる「恐喝」、なぐられてけがをさせられる「暴行」などの事件も少なくない。福岡市では5月に、登校中の小学5年生の男の子が、近所の男からいきなりガソリンをかけられ、火をつけられておおやけどした事件もあった。
ジャン 通学路には「ちかん注意!」の看板があるわ。これも事件よね。
――そうだよ。体にさわるなどの性的な犯罪は最近、すごくふえているんだ。ことしの前半だけでも、小学生が被害にあった事件は945件で、5年間で2倍にもふえている。
けがをするようなひどい事件もあるうえ、はずかしいからと親や警察に被害をいい出せない子どももいるんだ。被害にあった子の心にのこる傷はなかなか消えない。だから警察は、悪質な事件として、被害が出ないように努力しているんだ。
ところで「出会い系サイト」って知っている?
ケン なにそれ?
――携帯電話やパソコンでつながるインターネットのサイトで、おたがい名前も知らない人どうしが知り合えるコーナーなんだ。最近は小学校でもパソコンを学んでいるし、携帯電話を持っている子もいるだろう。出会い系サイトを利用したために犯罪にまきこまれた小学生もいるんだよ。
少女の被害が多いため、法律は18歳にならない子どもが出会い系サイトを使うことを9月から禁止するんだ。
ケン なぜ、子どもをねらう悪い大人がいるんだろう。
――力が弱く、判断する力も大人ほどしっかりしていないから、ねらいやすいんだろうね。
ジャン そんなの、ひきょうだわ!
――そうだね。「男の人とカラオケや食事に行ったらお金をあげる」など、変なアルバイトで女の子をさそう大人もいる。こまったことだ。
ポン ぼくたちは、どんなことに気をつけたらいいの。
――「なるべくひとりで遊ばない」「でかけるときはだれかに行く先をいっておく」「あぶないと感じたときは大声で助けをもとめる」。いざというときは声が出ないかもしれないから、防犯ブザーや笛を持っているのもいい。声をかけてくる人が若い女性の場合もあるそうだよ。街でやさしそうな人に声をかけられても、絶対についていかないことが大事だ。
ケン そういえば、通学路に「こども110番の家」のステッカーをはった家があるよ。
――そこにいる人はみんなの味方だから、なにかあったらそこへにげこもう。そのほか、近所の警察署や交番などがどこにあるか、たしかめておくといいね。
いろいろ事件の話をしたけど、心配しすぎて家にとじこもってしまっては、よくない。十分気をつけながら、友だちと元気に遊ぼう。
(03年8月23日)
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