津川章久記者(朝日新聞政治部)
小泉さんがまた首相になったね。
総選挙で自民党がたくさん勝ったからでしょう。
そうだね。自民党だけで296議席をとった。連立して与党を組む(協力して政権をにぎる)公明党と合わせると、327議席。つまり、与党が衆議院(衆院、定数480)で3分の2をこえるんだ。
こんなに勝つのはめずらしいの?
法案を成立させるのに絶対的な力を持つ
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21日から特別国会が開かれ、衆議院本会議で首相指名の投票をする議員たち=21日、東京都千代田区の国会議事堂で
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全常任委で過半数にぎれる
参院で否決しても成立可能
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――過去にあまり例がない。自民党だけで過半数(半分以上)の議席をとったのは一九九〇年以来、十五年ぶりのことだ。
ケン それだけの議席をしめると、何か起きるの。
――法律をつくる機関である国会で、与党は圧倒的に有利な立場に立つね。
法律案(法案)は議長に提出されると、衆議院議員が所属する各委員会に回され、中身をくわしく話し合うことになる。与党が二百六十九議席以上を持つと、常におかれている委員会(常任委員会)の委員長職を与党が独占し、さらにすべての委員会で、委員数が野党(政権をとっていない党)の委員を上回ることが理屈上できる。
与党のどんな法案でも委員会の採決(多数決)で通り、本会議にかけることができるわけだね。こういう状態を「絶対安定多数」とよぶんだ。
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イラスト・小島文代
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ジャン 国会での話し合いに変化はあるの。
――法案は、衆院と参議院(参院)の両方で過半数の議員が賛成すれば法律になる。どちらかで否決されれば、「廃案」になる可能性もあるけど、今回の選挙の結果、与党は参院で否決された法案でも成立に持ちこむことが可能になった。
ケン どういうことなの。
――衆院で可決したけれども参院では否決された法案を成立させるには、ふたつの方法がある。衆参両院の議員でつくる両院協議会で新しい案をまとめて、衆参各院の本会議で可決するのがひとつ(図の@)。もうひとつは衆院の再議決(図のA)だ。これには本会議で三分の二の賛成が必要なんだけど、与党の議席は三分の二をこすから可能になるんだ。
郵政法案、今度は成立確実
ていねいな国会運営を期待
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ポン 参院はいらなくなっちゃうんじゃないの。
――政党間がはげしくあらそう衆院とちがって、参院は以前は学者や文化人が多く、衆院の行きすぎを食い止めたり正したりする役割を期待されている。でも、政党の特色が強まり、与党が過半数をしめると、話し合いも形式的になりがちだ。参院の意味はますます問われるね。
ジャン 小泉首相が成立させたがっている郵政民営化法案はどうなるの。
――郵政法案は、前の国会では衆院で可決されたけど参院で否決され、小泉首相が衆院を解散したから廃案になった。政府は21日に始まった特別国会に法案を出し直すけど、今回は成立が確実だ。衆院で3分の2をこす賛成があるから、参院でまた否決されたとしても再議決で成立となる。
ポン すごい数なんだね。
きょうのポイント
▽衆議院の480議席のうち、与党(政権をとる党)が3分の2をこえる327議席を持つ意味はとても大きい。
▽常任委員会の委員長職を与党が独占し、さらにすべての委員会で、委員数が野党(政権をとっていない党)の委員を上回ることが理屈上できる。
▽参議院で否決された法案でも、衆議院で3分2以上の賛成で再議決すれば成立する。 |
――このほか特別国会に、政府はやはり廃案になった障害者自立支援法案なども再提出する予定だ。
ジャン これからは与党が何をやろうとしても止められないのかな。
――総選挙の結果の議席数だから、与党は「国民の賛成をえた」ということもできる。でも、与党が数の力にまかせて中身のひどい法案を出したりすれば、かならず国民から不満の声があがる。つぎの選挙でしっぺ返しを受けるかもよ。多くの議席を持つからこそ、与党には、よく考え、ていねいな国会運営を進めてほしい。
(2005年9月24日)
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