ニュースでジャンケンポン

　福田康夫さんが内閣総理大臣（首相）になったね。首相が代わると、わたしたちにも影響があるのかなあ。

　いろんな影響があると思うよ。首相が代わると、どんな政策をとるのか、何に力を入れるのかも変わるからね。

　――君たちに関係が深いところでいうと、まず「教育」だ。前の首相の安倍晋三さんは、教育のあり方を変えることに力を入れていた。　
　教育基本法を改正し、愛国心や道徳心を身につけようと書きこんだ。安倍さんがつくった「教育再生会議」は、授業時間を増やすことや、入学を希望した子どもの数に応じて学校に予算を配る「教育バウチャー」をとり入れることなどを提言している。

　――福田さんが「安倍色」の強い政策をどこまで引き継ぐかはまだわからない。「社会総がかりの教育再生」をかかげているけれど、具体的なことはあまり語っていないんだ。

　――安倍さんは「戦後レジーム（体制）からの脱却（ぬけ出すこと）」をかかげていた。　

　――日本は昔、中国を侵略したり、朝鮮半島を植民地にして支配したりした。その反省から、二度と戦争はしないと憲法で決めた。　
　ただ、その憲法については「戦争で日本に勝ったアメリカに押しつけられた」といった批判もある。戦後の教育のあり方についても「日本は自分を守るため、しかたなく戦争をしたのに、自分たちがみじめになるようなことばかり教えている」と批判する人もいる。安倍さんは、そんな憲法や、教育のあり方を変えようとした。

　――福田さんはちがう。例えば、東京の靖国神社には戦争で亡くなった人だけでなく、戦争を指導した人もまつられている。だから中国や韓国は、首相がお参りすると反発するんだ。
　福田さんは、靖国神社に参拝しないと明言している。憲法改正の動きにもブレーキがかかるんじゃないかな。

　――「自立と共生」「ストック（持続可能）型」「男女共同参画」の社会をめざすといっている。

　――自民党が七月の参議院議員選挙で負けた原因の一つは、小泉純一郎元首相や安倍さんが進めた「構造改革」じゃないかといわれている。公共事業を減らす代わりにいろんな規制をゆるめ、企業ができるだけ自由に活動できるようにした。その結果、競争に勝った企業は強くなったけれど、地方や弱い立場の人たちがしわ寄せを受け、そうした人たちが自民党からはなれたというわけだ。
　だから、福田さんはこれまでより地方や弱者に配慮するといわれている。お年寄りがはらう医療費を増やすと決めていたのをしばらくやめておいてはどうかといっているよ。

参院で法案成立が難しく
国会の運営は大変そうだ

　ケン　これから国会はどうなるの。　

　――前途多難（困難が数多く待ち構えていること）だ。安倍さんが辞めた理由は健康問題だけれど、参議院で野党（政権をにぎる与党以外の党）の民主党の議員が増え、政府や与党（自民党、公明党）の思い通りに法律を成立させられなくなったのもひびいている。首相が交代した今も同じだ。
　まず問題になるのは、インド洋でアメリカなどの軍艦に給油している海上自衛隊の活動（活動を認めている法律の期限切れが間近）をどうやったら続けられるかだ。

　ジャン　審議（話し合い）はどう進められるの。

　――衆議院では3分の2以上が与党の議員だから、活動を続けるための法案を可決できる。でも参議院では与党が半分以下だから、野党が反対を続ける限り、否決されてしまう。
　否決されたらもう一度衆議院にもどし、3分の2の賛成で成立させられるというルールがある。ただ、野党が「やり方が乱暴だ」と反発し、参議院で「首相として問題がある」という決議を可決されるおそれもあるんだ。すると、その後の国会の話し合いはにっちもさっちもいかなくなる。

　ポン　何かたいへんそうだね。

　――そう、今後の国会運営は難しい。場合によっては、首相が「国民の意見を聴きたい」と、衆議院を解散して総選挙をする可能性もあるよ。

【きょうのポイント】

　▽安倍晋三前首相は、戦後体制からぬけ出すことをかかげ、教育のあり方を変えたり、憲法を変えるための法律を作ったりした。
　▽福田康夫首相は、７月の参議院議員選挙での大敗を受け、構造改革を見直し、地方や弱者に配慮するとみられる。
　▽参議院で野党・民主党が最も議席をしめることに変わりはなく、国会運営はきびしいことになりそう。場合によっては衆議院の解散総選挙もあるかもしれない。

（2007年9月29日）