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「アベノミクス」ってどんな意味?

 

 

日本の経済成長めざす首相の政策

榊原謙記者 朝日新聞経済部

 

ジャン 「アベノミクス」という言葉を最近よく聞くわ。どういう意味かしら。

 

榊原記者 去年12月に新しい内閣をつくった安倍晋三首相の経済政策のことなんだ。公共事業、大胆な金融緩和、成長戦略の三つを「三本の矢」として次々に実行することで、日本経済の足を引っ張る「デフレ」から脱出し、経済成長につなげていく計画だ。

 

ケン デフレ? 何それ?

 

 

 

イラスト・大塚洋一郎

 

 

 

 

 ――モノの値段が下がり続けることをデフレと呼ぶんだ。日本ではもう10年以上続いている。


 ケン それはいいことじゃないの?


――モノの値段が下がると、メーカーやお店のもうけが減ってしまう。すると、社員の給料が減らされたり、リストラされて仕事を失ったりする。家庭も買い物をひかえるしかなくなり、さらにモノが売れなくなる。
こうして、国民も企業も元気がなくなってしまう。安倍首相は、デフレから抜け出すことを最も大切な課題だとしているんだ。そのためには、みんながモノを買いたいと思うようになって、モノの値段が上がり始めないといけないんだ。


 ポン アベノミクスで、モノの値段を上げることができるの?


――そのために、「三本の矢」が登場するんだ。
まず、公共事業。これは、政府が市町村などと一緒になって、全国に道路や橋、港などを造ったり直したりする工事を注文することなんだ。工事の注文を受けた各地の建設業者は、作業をするための人をやとう。
すると、今まで仕事がなかった人が給料をもらえるようになって、買い物を増やす。お店の商品が売れて、お店や商品を作っている企業がもうかる。すると、お店や企業が社員の給料を増やし、ますます買い物が増える。多くの人がモノをほしがるようになり、結果的にモノの値段が上がると期待されるんだ。


 ジャン 金融緩和というのは何? デフレから抜け出すには大切なの?


――そうだね。安倍首相は、モノの値段が下がるのは、世の中にお金が十分に出回っていないからだと思っている。お金の量が少ないから、お金が貴重品になってしまって、みんな使いたがらないという。
そこで、日本で唯一、お札を刷っていい「中央銀行」の日本銀行(日銀)に、もっともっと大量のお金を世の中に出回らせてほしいと求めているんだ。これを、金融緩和と呼ぶ。日銀はこれまでも金融緩和をしてきたけど、安倍首相はまだまだ足りないと主張しているんだ。


 ポン 金融緩和ってどうやるの?


――日銀が、民間銀行が持っている国債(国の借金の証文)を大量に買い取り、その代金を民間銀行に払うんだ。
民間銀行は、日銀から受け取った大量のお金を手元に持っていても仕方がない。お金を企業や個人に貸し出し、企業はそのお金を使って、工場を建てたり、社員を増やしたりする。個人も住宅などを買ったりする。社会全体で投資や買い物を増やしたいんだ。
そして、本当に経済が成長していくためには、「三本目の矢」である成長戦略がとても重要だ。


 ケン 成長戦略って、どういう内容なの?


――具体的には、企業の活動のじゃまになっているルールをやわらげたり、大きく伸びそうな産業分野に政府がいろいろな支援をして育てたりすることをめざすんだ。安倍首相は今月、民間の学者や企業のトップを集めた会議をつくった。ここで6月までに、成長戦略をまとめてもらうんだ。


ジャン いいことばかりなの?


――公共事業をやるためには、国は巨額の借金をしなければならない。成長戦略を実現させて、日本の企業がお金をもうけて、国にたくさん税金を払ってくれないと、国は借金を返せなくなってしまう。だから経済の専門家の中には、「デフレからの脱出や経済成長を実現できなかったとき、アベノミクスは借金の山だけを残すことになりかねない」と指摘する人もいるんだ。


過去の記事↓

◆税金の仕組みをどう変えるの?(2013年2月1日)

◆原発周辺の「手抜き除染」って何?(2013年1月26日)

◆「アベノミクス」ってどんな意味?(2013年1月19日)

2013年1月19日付

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