朝日小学生新聞 毎日発行 月ぎめ1,720円 ブランケット版(8ページ) 朝日小学生新聞

ニュースでジャンケンポン

  

冷えていなかった「クール宅急便」

 

 

特別料金なのに常温で仕分け、配達


中村信義記者 朝日新聞社会部

 

 

ジャン 「クール宅急便」が、本当は冷えていなかったって聞いたわ。どういうこと?

 

中村記者 「クロネコヤマト」のコマーシャルで有名なヤマト運輸という運送会社で起きた問題だよ。食べ物などを冷えたまま運んでくれるサービスで、実は家に荷物が届くまでに、冷やされていない時間がかなりあったんだ。

 

ケン 冷やさないと、どんな問題になるの?

 

 

 

 

 

 

冷蔵庫が開けっぱなしになっているようす(どちらもヤマト運輸関係者撮影の動画から)

「冷凍」のシールがはられた荷物が外に置きっぱなしになっていました

 

 

 

 

――気温が高い夏だと、運んでいる食べ物が温かくなって、悪くなるおそれがある。冷凍のものが溶けて届いたという人もいたよ。私が取材した人の中には、悪くなった食べ物を食べてしまい、おなかをこわした人もいたよ。


ジャン こわいわ。どうしてわかったの?


――今年の夏は暑い日が多かったけど、そんな夏のある日、本当は冷やしてなきゃいけない荷物を、外の温度と同じ部屋で仕分けていたところを撮ったビデオを朝日新聞が入手したんだ。


ポン 仕分けって?


――ヤマト運輸の事務所の中で、荷物を届ける方面ごとに分けて、それぞれの方面に向かうトラックに積みこむ作業だよ。ヤマト運輸の決まりでは、クール宅急便の荷物は、冷蔵庫から出すたびに開け閉めしなきゃいけないのに、ビデオには冷蔵庫が開けっぱなしだったようすが映っていた。すぐにトラックに積みこまなきゃいけない冷凍の荷物が、床に置きっぱなしだったところも映っていたよ。


ケン だから、荷物の中の食べ物が悪くなったんだね。


――そう。でも、いったん温まった荷物をトラックの冷蔵庫に入れたら、また冷えるから、気づかなかったお客さんも多いみたい。
あとほかにも、トラックの冷蔵庫に入りきらないくらい荷物が多いとき、冷蔵庫の外に出したまま運ばれていたこともわかったんだ。お中元やお歳暮のときには食べ物を贈ってもらうことが多いけど、その時期は荷物が増えて冷やされないことが多かったそうだ。


ジャン そんなこと、許されるの!


――ダメだと思う。クール宅急便を使う場合、ふつうの荷物より210円から610円多く料金を払わないといけない。なのに、ふつうの荷物と同じあつかいなんて問題だ。
ヤマト運輸も大きな問題だと受け止めている。だから、日本全国の4千か所ほどにある営業所で、調査を始めたよ。仕分けや配達のときの決まりを見直すことも考えている。


ポン どうしてこんなことが起きていたの?


――宅配便は最近、お願いした時間に届けてくれるなど、とてもサービスが良くなっている。インターネットの通信販売で食べ物をたのむ人も増えているから、ヤマト運輸など運送会社があつかう荷物は毎年増えているんだ。でも、私が取材した多くのヤマト運輸の従業員たちは「配達や仕分けをする人が少なくて大変」って話していた。とても会社の決まりを守るような余裕がなかったそうだ。


ケン ヤマト運輸だけが問題だったの?


――同じようなサービスをしている日本郵便でも、やはり外の空気と同じ状態で荷物を運んだり仕分けたりしていた問題が明らかになった。日本郵便はヤマト運輸より会社の決まりが厳しくなくて、ヤマト運輸よりずさんだったと話していた郵便局の人もいたよ。日本郵便も全国の郵便局で調査を始めた。
ヤマト運輸も日本郵便も、荷物が多くなる12月のお歳暮の季節の前に、この問題を正して、きちんと運ぶしくみをつくり直すつもりだ。早ければ今月中に、対策を明らかにするよ。

 

過去の記事↓

◆CO2削減へ各国が自主目標づくり(2013年11月30日)

◆原発事故の後始末、国がやるの?(2013年11月24日)

◆冷えていなかった「クール宅急便」(2013年11月17日)

2013年11月17日付

実際の紙面ではすべての漢字に読みがながついています。

pageTOPへ