東電任せで復興進まず税金で支援
松村愛記者 朝日新聞政治部
ジャン 原子力発電所(原発)の事故の後始末に、政府がかかわることになったんだってね。
松村記者 事故を起こした東京電力福島第一原発がある福島の「復興」を求める、与党の提言のことね。
ケン どんな内容なの?
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福島県などでは除染作業が続いています=9月17日、福島市で©朝日新聞社 |
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復興にかんする与党の提言書を受け取る安倍晋三首相(右)=11日、首相官邸で©朝日新聞社 |
――原発事故から2年8か月がたつけど、放射能に汚染された原発周辺地域から避難したままの人がたくさんいるわ。また元通りに暮らせるようにするには、放射線の量を減らすため、建物の屋根や壁を洗い流したり、土を取りのぞいたりする「除染」が必要。
ジャン これまでは東京電力がやってたよね。
――でもなかなか進んでいない。だから政府がもっと除染にかかわるように、自民党と公明党の与党が安倍晋三首相に求めたの。
政府は提言にもとづいて、道路や橋をつくるのと同じように、税金を使って除染を進めることを決めたわ。放射能で汚染された土などを保管するための施設も、国がお金を出してつくることになったのよ。
ケン 安倍首相はどうしてそう決めたの?
――「事故の後始末はすべて東京電力が責任を持つ」方針は、安倍首相が就任する前に決まっていたの。安倍首相は、東京電力に任せっきりではいつまでたっても福島の復興が進まないと考えて、提言にそって政府が先頭に立って復興を進めるよう大臣に指示したわ。
ポン 除染はいつになったら終わるの?
――政府は、人が1年間に浴びる放射線の量が将来的に「1ミリシーベルト以下」になることをめざしているの。でも、除染が追いつかなくて、すべての地域で人が住めるようになるには時間がまだまだかかりそう。
ジャン 政府は避難している人たちにどんな支援をしているの?
――仮設住宅を用意したり、移転先で家を建てたりできるように支援してきたわ。避難している人の中には「福島にもどれる日を待つよりも、引っ越した場所で生活していく」と決めた人もいる。与党の提言では、そういう人たちが引っ越し先で生活しやすいように、東京電力がどれだけお金を支払うかという方針も今年中に決めることを政府に求めているわ。
それでも原発のすぐ近くで、放射線量がとびぬけて高い地域には、いくら除染をしてもまた人が暮らせる状態にもどらない地域もある。自民党の石破茂幹事長は今月2日、「『この地域は住めません、その代わりに手当てをします』といわなきゃいけない時期は必ず来る」と話したわ。
ケン 全員がふるさとに帰れるようにするといってたのに、気の毒だなあ。それで、事故の後始末は進むのかな。
――事故を起こした東京電力は、お金の手当てがつかなくなって、あっぷあっぷの状態。政府が税金を使って後押しすることで、後始末が早く進むことが期待できるわ。
でも除染にかかる費用は3兆円とも5兆円ともいわれ、これからどれだけの税金が使われることになるのかわからない。自民党の中には、税金で東京電力を助けることに反対する議員もいるわ。
ポン 福島の人たちはどう受け止めているの?
――福島県の知事や市町村長は与党の提言をおおむね歓迎していて、「事故の前の環境を早く取りもどしてほしい」と政府に求めているわ。これから福島の復興がどう進むのか、しっかり見ていかないとね。
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