米軍基地移設、知事の判断に反発
谷津憲郎記者(朝日新聞那覇総局長)
ケン 沖縄県で「埋め立て」がニュースになっているみたいね。どうしたの?
谷津記者 沖縄の多くの人たちが反対してきた海の埋め立てを、仲井真弘多知事が認めたからだよ。場所は、名護市辺野古というところ。人魚のモデルといわれるジュゴンもやってくるきれいな海なんだ。国が去年の3月に「埋めてもいいですか」と知事にたずねていたんだ。
ポン 何のために?
|
国の埋め立て申請が認められた辺野古の海=2012年9月、沖縄県名護市で©朝日新聞社 |
|
埋め立てを認めたことについて会見で発表する仲井真沖縄県知事(中央)=2013年12月27日、那覇市で©朝日新聞社 |
――新しくアメリカ(米)軍の基地をつくるんだ。地図を見てごらん。宜野湾市に普天間飛行場という米軍基地がある。「街の真ん中にあって危ないから、ここは日本に返す。でもその代わりとなる飛行場を沖縄県内につくる」と日本とアメリカが約束した。1996年、みんなが生まれる前のことだね。でも、沖縄の人たちはずっとこれに反対してきた。今回、知事が埋め立てを認めたことで、工事が進む可能性がぐんと高くなった。
ジャン なぜ反対なの?
――沖縄は日本の0・6%の面積しかないのに、全国の米軍基地の74%が集まっている。宜野湾市の小学校では、米軍機が落ちたときのための避難訓練をしているくらいだ。新しい飛行場は、広さ約205ヘクタール。東京ディズニーランド四つ分もある。9年半かけて工事をし、V字形に2本の滑走路をつくって、米軍のヘリコプターや飛行機が1日に何十回も飛ぶことになる。「米軍基地が多すぎる。本土に比べて、いくらなんでも不公平だ」と言っているんだ。
ポン でも仲井真知事は辺野古の埋め立てを認めたんだね。
――じつは知事も「辺野古につくることには反対の声が強い。本土には、使われていない飛行場がたくさんある。普天間を一日でも早く危なくなくするには、新しい基地はそこにつくった方がいい」と言い続けてきた。選挙のときも、そう約束して当選した。
ケン えっ? でも埋め立てを認めたってことは、基地をつくってもいいよってことでしょ。約束やぶりじゃないの?
――「やぶっていない」と仲井真知事は説明している。埋め立てを認める前に、仲井真知事は安倍晋三首相と会った。そのときに「5年以内に、普天間飛行場を使わない状態にしてほしい」と言って、オスプレイという輸送機を県外に移すことをお願いしたんだ。安倍首相は「政府としてできることはすべて行う」と答えた。
だから、法律の決まりにしたがって埋め立ては認めたけれど、政府の計画では辺野古への移設は約10年かかるから、「5年以内」を実現するには県外に基地をつくるしかない、と知事は言いたいようだね。
ポン 安倍首相が言うなら、安心だね。
――う〜ん、そうとは言い切れない。もともと政府は「基地を移す場所は、辺野古しかありえない」と言っていた。「5年以内」を実現するために、かえって辺野古の工事を急ぐ可能性もあるよ。知事も工事が終わったら「米軍はもどって来るだろう」と言っている。
ジャン なんだか訳がわからないわ。
――沖縄でも「おかしい」という声がたくさんある。名護市長も「埋め立ては反対だ」と言っていたからね。地元のトップが反対したまま埋め立てた例は、これまで一つもないんだ。県議会は多数決で「知事はやめるべきだ」と決議をした。知事は判断を取り消せという裁判も起こされたよ。
ケン これからどうなるの?
――政府は1年かけて工事の事前調査をする。でも反対運動が起きることはまちがいない。19日には、名護市長選がある。工事に賛成する人と反対する人が真っ向からぶつかっているから、市民がどちらを選ぶのかも注目だね。
|