日本は世界で最も少ない
若者による無差別殺人が3月末に相次ぎました。高校を卒業したばかりの少年(18歳)が駅で見知らぬ人を突き落としたり、24歳の若者が駅などで8人も殺傷したり。「最近の若者はこわい」。つい、そういいたくなりますが、実は日本の若者は昔よりずっと人を殺さなくなっているのです。
5年前、わたしは長谷川真理子早大教授(当時)や影山任佐東工大教授に取材して、朝日新聞に「日本の若者は殺さない」という記事を書きました。日本は殺人事件の最も少ない国のひとつ。それは今も変わりません。
世界保健機関(WHO)の最新データによれば、殺された人は人口10万人当たり0.6人(2002年)です。外国は英国0.7人、米国6.5人、ロシア31.0人で、米国は日本の11倍、ロシアは53倍も危険率が高い。
被害者が少ないのは、殺人を犯す人が少ないからです。
図からも、日本の男性の殺人者率(人口10万人当たり)が1955年から年ごとに減っていることがわかります。とくに20歳前後の「山」がすっかり消えてしまったことがよくわかります。
「若者は血気盛んで、世界中どこでも、最も殺人を犯しやすい年代」ですが、「その山がなくなってしまった。こんな国は日本だけ」と影山さんはいいます。
図は02年までですが、警察庁によれば、少年(14〜19歳)の殺人犯は02年が80人だったのに対し、07年は62人ですから、まだ減っています。
かけがえのない命、殺された人や家族の悲しみと怒りは当然です。でも、だからといって社会が道徳教育や刑罰強化に走るのは科学的な態度とはいえません。
むしろ、日本の戦後社会で殺人者率が下がったことを評価し、さらに推進するにはどうしたらよいのかを探ることが大事だと思うのです。
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