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2017年11月3日付
日本語の辞書の代表的な存在である岩波書店の「広辞苑」が、来年1月に10年ぶりに新しくなります。新たに記されることになった言葉もあれば、説明が一部書きかえられたり、加えられたりした言葉もあります。言葉は時代とともに少しずつ変化しますが、「今の共通了解を示す」のが広辞苑。さて、どんな風に変わるのでしょうか。(八木みどり)
広辞苑は百科事典の役割も持った辞書。1955年に第1版が出され、内容を見直す改訂を加えながら、2008年に発売された第6版までで計1190万部を売り上げている、まさに「国民的辞書」です。
来年1月に発売される第7版には約1万語が加えられ、計約25万語が収められています。新たに加わった言葉は約10万語の中から、よく使われているかや、重要度などを基準にしぼりこまれました。岩波書店の担当者によると、今はよく使われている言葉でも、いっときの流行で終わってしまうような言葉は選ばず、「これから定着するかどうか」もポイントになります。
今回採用された言葉の一例には、夏の取り組みとしてすっかり定着した「クールビズ」や、11年に発生した「東日本大震災」などがあります。京都大学教授の山中伸弥さんが作った「iPS細胞」、日本の研究チームが発見した113番目の新元素「ニホニウム」も入りました。
第6版で加わった「ウルトラマン」に並ぶ人気をほこる「仮面ライダー」は、今回の改訂で入りました。12年に開業した、東京の新名所「東京スカイツリー」も入りましたが、東京・築地からの移転計画でゆれている「豊洲市場」の収録は見送られました。
言葉には、時代とともに新しい意味が生まれることもあります。例えば「盛る」は「話を盛る」というように、「おおげさにする」という意味でも使われるようになっており、今回の改訂でも反映されています。「炎上」は、「火が燃え上がること」という意味に加えて、「インターネット上で記事などに対して非難や中傷が数多く届くこと」との意味が加わりました。
収録する言葉は増えても、厚さはこれまでとほぼ変わらず、機械で製本できる限界の8センチに収めています。製紙会社が広辞苑のために開発した、これまでよりもさらにうすい紙を採用することで実現させました。
今は辞書を引かなくても、インターネットで気軽にさまざまなことが調べられます。そんな時代の中でも、広辞苑は「紙」の辞書にこだわり続けています。
岩波書店社長の岡本厚さんは、「紙の辞書は、その手触りや厚さ、紙の香りまで感じることができる。それはその人にしかできない『経験』になる。紙の辞書には紙の辞書にしかない価値がある」とした上で、「だからもっと、辞書を引いてほしい」と話しています。
発売は来年1月12日。6月30日までは特別価格で普通版が9180円、2分冊の机上版が1万4040円。
アラサー がん見 ググる 告る ディスる
TPP 豊洲市場 ほぼほぼ ゆるキャラ
記事の一部は朝日新聞社の提供です。