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2017年7月16日付
高知県大川村が、村議会を廃止して、有権者全員が参加して意思決定する「町村総会」を設ける検討を始めた。村の人口は406人で、議員のなり手不足が心配されることが背景にある。議会の存続を前提にしつつも、村は具体的に研究していく方針だ。
大川村議会の議員定数6は、沖縄県北大東村の定数5に次いで2番目に少ない。現職6人の平均年齢は71歳で、2015年の村議選は無投票だった。
議員のなり手がなかなか現れないことに危機感を抱いた議長の求めで、5月から議会が町村総会設置の検討を始めた。12月20日までに考えをまとめる予定だ。また、村長も総会について調べると表明、村幹部を中心に情報収集を始めている。
地方自治法では、町村は議会を置かず、有権者による総会を設けられると定めがあり、「議会の規定を準用する」とも書かれている。総務省によると、有権者の半数以上の出席が必要で、条例や予算を定めたり財産を処分したりと幅広く村の方針を決めることができる。
ただ、町村総会を設置するとしても、その姿がどのようなものになるかは、はっきりしない。1947年に地方自治法が施行されてから、51~55年の東京・八丈小島の宇津木村(現・八丈町)しか前例がないためだ。
町村総会の運営には課題も多そうだ。大川村の集落は山あいに点在し、村民が総会に集まるのが難しい。運営にどれくらい費用がかかるかもわからない。行政をチェックするには議会が必要だという意見もあり、村長も村議たちも、あくまでも「議会存続が前提」との思いは共通している。
高知県も、村議会を安定的に続けるためにどうすればいいか、村とともに検討を開始した。県と村の幹部で村議会維持対策検討会議を6月末に設置し、村の全有権者約360人を対象にアンケートを実施した。議員になる上で何が障害になるかなどの答えを7月中に集計する予定だ。今後も2カ月に1回以上のペースで会議を開き、年内には議論を集約、議員確保に必要な制度改正などを国に提言する考えだ。
大川村同様の悩みを抱える町村は少なくない。2015年の統一地方選では、373町村議選のうち89選挙(23.9%)が無投票だった。人口減が進み、議員のなり手不足は全国的な問題となっている。議会運営や議員の待遇を改めてなり手を増やす工夫をするのか、町村総会を開きやすくするのか。大川村議会をめぐる議論は、地方自治のあり方を改めて考えるきっかけになりそうだ。
山に囲まれた高知県大川村の中心部
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
堀内要明
朝日新聞高知総局記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。