朝日中高生新聞
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法律できて20年、存在感増すNPO

2018年4月8日付

 民間の非営利活動を後押しする、NPO法(特定非営利活動促進法)ができて20年。社会課題の解決などに取り組むNPO法人の数は5万を超え、私たちの生き方や価値観に影響を与えるほど存在感を増してきた。そのきっかけになったのは、二つの大震災だ。

「ボランティア元年」の「阪神」、「寄付元年」の「東日本」

市民の力を示した二つの大震災が転機

 NPO法ができたのは1998年。それまで市民団体は法的な地位を得にくく、不動産を借りるのも銀行口座を開くのも難しかった。
 転機となったのは、95年の阪神大震災だ。被災地には延べ100万人以上のボランティアが駆けつけて救援活動を行った。「ボランティア元年」と呼ばれ、民のパワーを見せつけた。
 そうしたうねりが国会を動かす。当時は自民、社会(後に社民)、さきがけの連立内閣。市民団体が党派を超えた議員と手を組み、自民党内の反対派を説得。法案名から「市民」の文言を外すことで折り合い、NPO法が成立した。
 NPOへの寄付を優遇する「寄付控除」の仕組みも2001年に実現した。しかし寄付は広がらず、NPOにとっていかに活動資金を確保するかが課題として残った。
 こうした状況を変えたのが11年の東日本大震災だ。多くのNPOが組織の柔軟さやアイデア、SNSを駆使して復興に活躍。寄付も集まり、「寄付元年」と注目された。
 民主党政権のもとで、NPOがこうした寄付の受け皿になるよう「寄付税制」も大幅に拡充された。認定を受けたNPO法人に寄付した場合に、寄付額の一部が納めた税金から戻ってくる仕組みで、対象になる認定NPO法人は1千を超えた。

ビジネスとして社会課題を解決する「事業型」が増える

「行動」と「声」が政治を動かす力にも

 この20年間の大きな変化の一つは、活動から収益を得る「事業型」NPOが増えたことだ。介護保険制度が始まると事業者として多くのNPOが参入したほか、ビジネスで社会課題を解決する「ソーシャルビジネス」や「社会起業家」も話題になった。
 誤解されがちだが、NPOは利益をあげること(営利)を目的とはしないが、活動により利益をあげてよい。ただその利益を分配してはならず、次なる事業の活動費として使う。
 起業支援に取り組むNPO「ETICエティック」は93年の創業以来、300以上のNPO立ち上げに関わった。みやはる代表理事は「20年前には新卒の人がNPOの起業なんて考えられなかった。今や、働き方の選択肢の一つ。お金を稼ぐことより、社会を変えることに価値を置く若者が増えている」と話す。子育てや介護などで家庭と仕事の両立が難しくなった人たちが活躍できるのも、NPOの特徴だ。
 政治の場面でもNPOの存在感は増してきている。病児保育などを手がけるNPO「フローレンス」のこまざきひろ代表理事は、障害児の保育や赤ちゃんの養子縁組といった課題に、与野党の議員とともに取り組む。「サービスのインフラを作りつつ、法律も変えていく。アクションとボイスの両方の役割を求められているのが、現在のNPOだ」

朝日新聞のニュースサイト「withnews(ウィズニュース)」(https://prv.withnews.jp/)では、山下記者によるNPO法の解説がアニメ動画で見られます。サイト内で「NPO法」と検索してみてください。

東日本大震災の被災者の家に物資を届けながら、必要なものが何かを調査するNPOスタッフの写真
東日本大震災の被災者の家に物資を届けながら、必要なものが何かを調査するNPOスタッフ(両端)=2011年3月、宮城県石巻市
(C)朝日新聞社

NPOができてどう変わったかの図と、NPO法人数の推移と年表
(C)朝日新聞社

朝日新聞地域報道部記者山下剛

解説者
朝日新聞地域報道部記者
やましたごう

 

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