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2018年4月29日付
中国の習近平国家主席(64)が3月、国会にあたる全国人民代表大会(全人代)で再選され、正式に2期目がスタートした。自らの任期を延ばす憲法改正もあっさり実現し、「1強」体制を着実に固めた。大きな権力を手にした習氏は何を目指しているのか。
今年の全人代は、昨年秋の共産党大会で総書記に再任されて権力基盤を固めた習氏が、自らの政策を実行しやすくする態勢を整える意味が大きかった。結果的に、習氏の狙いはほとんど達成できたといえる。
何より大きいのは、自らの長期政権を制度的に可能にしたことだ。共産党が支配する中国の最高指導者は党トップの総書記だが、今は外交などを担う国家主席も兼務している。総書記に任期制限はないが、国家主席は憲法で2期10年までという制限があった。
だが、習指導部は全人代が始まる直前、任期制限を撤廃する憲法改正案を突然発表した。「長期支配は独裁につながりかねず、歴史に逆行する」と知識人などから批判が出たものの、全人代では、約3千人の代表のうち、反対はわずか2票で成立させた。これで習氏は5年後の2023年以降も、国家主席を続けられるようになった。
人事面では、補佐役の国家副主席に盟友の王岐山氏(69)を登用した。王氏は習氏の1期目に、汚職高官を摘発する党機関トップの書記として、「反腐敗」運動を指揮した実力者。昨年、「68歳定年」の内規により党の要職からいったん退いたが、意表をつく形で習氏が政府の要職につけた。党序列で2位の李克強首相の影響力は低下しそうだ。
習氏が今回、強引とも思える手法で態勢作りを進めたのはなぜか。
習氏は建国から100年を迎える今世紀半ばまでに、世界トップレベルの実力を持つ「社会主義現代化強国」を実現するという目標を掲げている。だが、目の前には産業構造の転換や貧困問題といった難題が待ち受けている。大きな改革を進めるには、強いリーダーシップと安定した長期政権が必要という判断があったとみられる。
政権基盤が安定したことで、外交面でも思い切った政策がとれそうだ。米国との貿易摩擦では強気の対抗策を打ち出し、尖閣諸島の問題をめぐって関係が悪化していた日本には王毅国務委員兼外相を派遣し、改善に向けてかじを切った。
ただ、中国は建国の指導者、毛沢東が圧倒的な権威から独裁色を強め、「文化大革命」などの政治運動で国を混乱させた歴史がある。そのため、改革開放を進めたとう小平の時代以降は、複数の幹部の話し合いで重要政策を決める「集団指導体制」に移行した。
習氏の権力が強まりすぎれば、集団指導体制が有名無実化し、再び独裁政治に陥りかねないと心配する見方もある。
全人代で国家副主席に選ばれた王岐山氏(左)と握手を交わす習近平国家主席=3月17日、中国・北京
(C)朝日新聞社
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解説者
延与光貞
朝日新聞中国総局記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。