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2018年6月10日付
国会や地方議会に女性議員を増やすことをめざす「候補者男女均等法」ができた。人口は男女半々なのに、日本の議会は海外の国々と比べても女性が際立って少ない。このアンバランスな状態が改善されるかどうかは、それぞれの政党の本気度合いにかかっている。
候補者男女均等法は、全ての政党の国会議員が賛成し、5月16日にできた。正式な名前は「政治分野における男女共同参画推進法」。国会や地方議会の選挙で、候補者の数をできるだけ男女で均等にするよう、政党に努力を求めるものだ。
日本では戦争が終わった1945年、女性にも参政権が認められた。それから70年あまりたつが、いま女性議員は衆議院で1割、参議院で2割しかいない。国際機関「列国議会同盟」によると、衆議院の女性議員の割合は、193カ国中160位という低さだ。
地方議会も同じような状況だ。特に市町村では、女性議員が1人もいない議会が、全体の2割ある。
人々のさまざまな困りごとや要求に耳を傾け、法律や政策に反映させるのが議員の役割だ。しかし、男性ばかりの議会では、女性や子どもたちにかかわる問題が見過ごされたり後回しにされたりしがちだ。
こうした状況を変えようと、海外の国々では30年ほど前から、さまざまな対策をとってきた。「男女どちらも候補者の40%を下回ってはならない」と政党に義務づけている国もあれば、男女がちょうど半々になるよう、県議会の選挙には男女ペアで立候補することにした国もある。
女性議員が増えると、何が変わるのか。
女性議員の割合が高い国々では、民主主義の度合いや、国内総生産(GDP)に占める教育費の割合が高く、軍事費の割合が低いというデータがある。また、女性議員が増えたことで、男性議員たちが夜にお酒を飲みながらこっそり決めてきたことが、昼間の議会でオープンに話し合われるようになった、という報告もある。
日本も、候補者男女均等法ができたことで、より多様な声を政治に反映するための第一歩を踏み出した。
とはいえ、実際に女性議員を増やしていくためには課題も多い。
法律では、候補者の数をできるだけ男女均等にするよう政党に「努力」を求めているが、「義務」ではない。つまり、ある政党がもし女性の候補者を1割しか立てなかったとしても、法律違反にはならない。せっかくできた法律を生かすためには、有権者が各政党の取り組みを厳しく見守っていくことが大切だ。
「政治は男性の仕事」という考え方や、家事や育児の負担が女性に偏りがちなこと、現役の女性議員が出産のため休むことを批判する声があることなども、女性の立候補を難しくするハードルになっている。
こうしたハードルを低くして、女性も議員として能力を発揮しやすい環境を整えることが求められている。
候補者男女均等法が成立し、国会議事堂を背に記念撮影する女性たち=5月16日、東京都千代田区
(C)朝日新聞社
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解説者
三島あずさ
朝日新聞地域報道部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。