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2018年10月14日付
沖縄県知事選が9月30日に投開票され、前衆院議員の玉城デニー氏(59)が、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)ら3氏を破って初当選した。過去最多得票の大勝で、県民は、争点だった米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に「ノー」の意思を示した。
「8万票以上の大差がついたのは(亡くなった)翁長雄志知事の強い思い、辺野古の新基地断念、経済も平和も両立させていきたいとの願いが、多くの県民の共感を呼んだと思う」
4日に初登庁し、就任会見に臨んだ玉城氏は知事選の結果をこう振り返った。
移設計画が浮上してから6回目の知事選は、翁長氏の後継である玉城氏と、安倍晋三政権が全面的に支援する佐喜真氏との事実上の一騎打ちだった。
玉城氏は、翁長氏の遺志を継ぐと前面に押し出し、街頭演説ではウチナーグチ(沖縄の言葉)を多用。「イデオロギーよりアイデンティティー」という翁長氏の言葉を繰り返した。
また米兵の父を持ち、母子家庭で育った生い立ちを紹介。LGBTら性的少数者への理解促進や失業率の改善など独自色も出し、支持を広げた。
一方、佐喜真氏は、辺野古移設への賛否は示さず、「県民の暮らしを最優先する」と教育や生活支援を押し出した。菅義偉官房長官や小泉進次郎・自民党筆頭副幹事長らが何度も沖縄入りし、自民、公明、維新が組織戦を徹底した。
だが沖縄は空前の好景気で、佐喜真氏の選対関係者は「争点にできるような攻撃材料がなかった」と言った。県選管によると、当日有権者数は114万6815人。投票率は63.24%(前回64.13%)だった。
ただ、玉城氏にとって、今後の見通しは決して明るくない。
安倍政権はこれまで、翁長氏がいくら反対を訴えても、移設工事を進めてきた。辺野古の沿岸部は護岸が一部つながり、埋め立ての土砂を入れる寸前だ。県が8月末に、工事の根拠となる埋め立て承認を「撤回」したため、工事は止まっているが、政府は対抗措置をとるとみられる。
菅官房長官は4日、「辺野古移設が唯一の解決策であると考える」と述べ、政府の姿勢は変えないとの考えを示した。
玉城氏にとって、工事を止められる手段はほとんどないとされる。玉城氏は就任会見で「いばらの道ですが、踏みしめて、踏み越えていくという覚悟が必要。かき分けていって、その先に、県民が求めている未来が必ず見えてくると信じて突き進んでいきたい」と覚悟を見せた。
一方で、最初から対立するのではなく、日米両政府と対話を求めていく考えを明らかにした。また佐喜真氏の獲得票に触れ「31万人以上の方々の思いも受け取りながら、一緒に新時代沖縄の構築に向け取り組みたい」と融和を強調した。
当選 玉城デニー 無新 396632
佐喜真 淳 無新 316458
(自民、公明、日本維新の会、希望の党推薦)
兼島 俊 無新3638
渡口 初美 無新3482
沖縄県庁に初登庁し、知事室で名札を付けてもらう玉城デニー氏=10月4日、那覇市
写真はどちらも(C)朝日新聞社
辺野古の埋め立て海域をかこった護岸=8月10日、沖縄県名護市
解説者
伊東聖
朝日新聞那覇総局長
記事の一部は朝日新聞社の提供です。