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2018年11月25日付
東北電力は、運転開始から35年目となる女川原発1号機(宮城県)を廃炉にする方針を決めた。東京電力福島第一原発事故後、廃炉や廃炉方針が決まった原発は20基目。再稼働には巨額の安全対策費がかかるため、老朽化した出力の小さい原発は廃炉が進んでいる。
女川1号機は、福島第一と同じ沸騰水型炉(BWR)で、1984年に営業運転を始めた。出力は52.4万キロワット。東北電力が持つ女川2、3号機(いずれも82.5万キロワット)や東通原発(青森県、110万キロワット)に比べ出力が小さい。
東北電力が廃炉を決めた最大の理由は、経済性だ。福島の事故後にできた新規制基準は、地震や津波への厳しい対策を義務づけ、再稼働には1千億円超の安全対策費がかかるようになった。
また、原発の運転期限は原則40年と定められ、延長が認められても最大60年。大きなお金を投資して工事をしても、限られた期間で供給できる電力量が少なければ、採算が取れなくなる恐れが出てきた。
そのうえ、女川2号機と東通原発は再稼働に向けて国の原子力規制委員会が審査中で、とくに女川2号機は近い将来に再稼働できる可能性がある。ほかの原発の見通しが立ったことも、廃炉の決断を後押しした。
廃炉や廃炉方針が決まった20基のうち、福島第一と福島第二の両原発の計10基は、地元の要請で廃炉の方針が決まった。それ以外の10基は、炉が特殊な構造の関西電力大飯1、2号機(福井県)を除き、出力が60万キロワットに満たない中型炉だった。
一方、60年までの運転延長が決まった原発は、関西電力の高浜1、2号機と美浜3号機(いずれも福井県、82.6万キロワット)、日本原子力発電の東海第二(茨城県、110万キロワット)の計4基で、いずれも出力が80万キロワット以上ある大型炉。出力の違いによって、運転の継続か、廃炉か、選別が進んでいる。
原発は火力発電に比べ燃料費が安く、長期間運転することで「経済性がある」とされてきた。ただ、福島の事故後は日本だけでなく世界各国が厳しい安全規制をするようになり、対策費が上昇。経済性は揺らいでいる。さらに国内電力各社は、電力の小売り自由化で厳しい競争に置かれるようになり、コスト意識が上がった。
東日本大震災時、国内の原発は54基あったが、いま残るのは34基。政府は、2030年度の電力量に占める原発比率を「20~22%」を目標にしているが、達成には30基程度の再稼働が必要になる。今後も再稼働は難しい一方、廃炉は進むとみられ、その実現は難しい状況になっている。
女川原子力発電所=2018年1月
(C)朝日新聞社
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解説者
小川裕介
朝日新聞科学医療部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。