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2018年12月23日付
日本の経済は緩やかな景気の回復が続いている。このまま続けば来年1月には戦後で一番の長さの拡大期になる。ただ、米国と中国の間の貿易をめぐる摩擦など、経済への悪影響が心配される動きも増えてきている。先行きの楽観視はできない。
今の景気回復は、2012年12月に始まった。金融危機後の不況から世界の景気が回復に向かい始めており、日本も景気が上向き始めた。さらに安倍晋三首相が就任し、経済政策「アベノミクス」で、大がかりな金融緩和などを行い、お金が世の中に多く出回るようにした。
お金が出回ると、企業は借金をしやすくなり、新しい事業に挑戦しやすくなる。仕事も増えて、働ける人が増えていった。株などへの投資も盛んになり、株価が上がった。株を持っている人はもうかり、高額な買い物をするようになった。借金もしやすく、家を建てる人も増えた。
この期間、中国や東南アジアでも経済成長が続き、お金に余裕がある人が増えた。日本に旅行に来る人たちが増え、日本でたくさんお金を使うようになったことも、日本の景気回復の一つの原因になった。
今年の夏は地震や台風など多くの災害が発生して、工場が止まったり、外国人が日本旅行を中止したりして、一時的に景気が足踏みした。それでも、今も緩やかな景気回復は続いているとみられている。このまま来年1月まで続けば、景気回復の長さは2002~08年にかけての回復期を抜いて戦後最長になる。
ただ、「実感はない」とよく言われる。カラーテレビや自家用車が普及して、皆が豊かになった1960年代の高度経済成長期は、10%を超える成長率だった。しかし今は1%台だ。企業のもうけが好調な割に、給料も増えていない。一方で、身の回りの物は値上げが続き、豊かになったとは感じづらい。
来年の10月には10%への消費増税も予定される。1千兆円を超えるほどの借金を背負っている日本にとって、税収を増やして財政を立て直すのは避けて通れないことだ。ただ、消費税が上がれば買い物に使えるお金は減り、経済には悪影響が出る。政府は、食品などの税率は上げず、住宅や車を買うときの購入支援も行うなどして景気悪化を避けようとしている。一方、こうした政策はお金がかかるので、財政には悪影響だ。
さらに日本の経済にとって大きな心配は、米国と中国の貿易摩擦だ。両国は互いに高い関税を掛け合っている。関税が高くなると輸出入が鈍る。中国製品には多くの日本製の部品が使われているため、影響は避けられない。中国の経済が悪化すれば、中国人旅行客も減ってしまう。このまま景気の回復が続くかどうかは不透明になってきている。
雪の合掌造り集落を訪れた外国人観光客=岐阜県白川村荻町、12月14日
どれも(C)朝日新聞社
解説者
森田岳穂
朝日新聞東京本社経済部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。