朝日中高生新聞
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水道事業、「民営化」しやすく法改正

2019年1月20日付

 水道料金が全国的に上がっている。水道事業は主に市町村が担うが、人口減少で水の使用量が減り、収入が落ち込んでいることなどが影響している。一方、水道事業を「民営化」しやすくする改正水道法が昨年12月に成立し、水道の将来が変わりつつある。

人口減少で収入減、老朽化した水道管の取り換え工事も必要に

家庭用料金、30年で3割以上値上がり

 水道事業は川や地下から取った水を浄化して、家庭や学校に届ける。税金ではなく、原則、利用者からの料金収入で経営することが法律で求められている。
 ただ、経営環境は市町村ごとに大きく違う。地下水やわき水が豊富で水が安く手に入る地域もあれば、ダムなどで多大な費用をかけている地域もある。収入は人口の増減で大きな影響を受ける。
 こうした中、全国的に問題となっているのが、水道管の老朽化だ。管の多くは1960年代以降に整備され、40年以上たった古い管の割合は、2016年で約15%に上る。管の取り換え工事はこれからますます必要になるが、それに見合った収入がなく、値上げに踏み切る自治体も出てきている。
 日本水道協会によると、月20トン使ったときの家庭用(管の口径13ミリ)の平均料金は17年4月で3228円。この30年で3割以上上がり、14年から4年連続で過去最高を更新している。

自治体の判断で、運営権を民間企業に売り渡せる仕組みを導入

海外では公営に戻す事例が相次ぐが…

 こうした状況を受け、政府は昨年12月、水道法を改正した。水道管や浄水場の維持や修繕を市町村などに義務づけるとともに、水道事業の経営をしっかりさせることが狙いだ。具体的には、近隣の市町村と共同で浄水場を使ったり、水道事業の経営を一緒にしたりする広域連携を進めていく。
 さらに、民間企業に水道事業を任せやすくする。自治体が浄水場や水道管の所有権を持ち、水を届ける最終責任を負ったまま、運営権を企業に売り渡せる仕組みの導入だ。運営権を買った企業は、住民から水道料金を受け取り、水道管の更新や水を届ける業務を担う。
 経営手腕のある企業に運営を任せられれば、専門性のある職員が担当したり、資材を割安に購入したりして、業務を効率化できると期待される。今回の制度では、災害や企業が経営破綻した際には自治体が責任をもって対応でき、すべてを企業に売り渡す完全民営化よりも、住民の納得が得やすいとされる。
 ただ、企業は利益を上げなければ立ちゆかない。同じような制度で民営化した海外の自治体では、料金が跳ね上がったり、水道管などを約束通りに更新しなかったりして、公営に戻すケースが相次いでいる。
 日本の制度では、料金の上限は自治体が事前に決め、国も適切か審査する。しかし、企業との契約は通常20年以上におよび、「いざ問題が起きたときに取り返しがつかなくなる」といった懸念の声は多い。政府は「導入するかは自治体の判断」だと説明している。

水道料金の値上がりが続く背景の説明。家庭用の平均水道料金の推移を示したグラフ。料金改定を検討しているかしていないかのアンケート結果を示したグラフ。

水道施設を点検する民間業者の職員らの写真
水道施設を点検する民間業者の職員ら。運営管理や水質管理、薬品の調達も手がけるほか、別の浄水場の送水量なども離れた場所から操作している=2018年11月、埼玉県白岡市の高岩浄水場
どちらも(C)朝日新聞社

阿部彰芳記者の写真
解説者
あきよし
朝日新聞科学医療部記者

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