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2019年2月3日付
中国の無人月探査機「嫦娥4号」が1月3日、世界で初めて月の裏側に着陸した。月の裏側は地球から直接見えず、科学的に未解明な点が多い。中国には将来の資源開発などで優位に立つ思惑もあるとされ、宇宙を舞台にした米国との競争が激化しそうだ。
中国国営新華社通信によると、嫦娥4号が着陸した場所は月の裏側のクレーター。着陸から約12時間後、嫦娥4号に積まれていた探査車が月面に降り、周辺を走行した。探査車の重量は約140キロ。パノラマカメラや地中レーダーなどが搭載されている。
月は常に同じ面を地球に向けて回っており、月の裏側は地球と直接交信できない。解決策として中国は昨年5月、嫦娥4号と地球の通信を中継する衛星「鵲橋」を打ち上げた。
月の裏側は、表側と比べてクレーターによる起伏が多く、地殻も表側と比べて厚いなどなぞが多い。実際に着陸して調査することで、月の成り立ちなどについて新たな知見が得られる可能性がある。
月の北極や南極付近には、水資源があると指摘され、宇宙開発での利用を狙う各国の注目が集まっている。核融合発電の燃料となる「ヘリウム3」も埋蔵されているとされる。中国には、他国に先行して調査の実績をつくり、将来の資源獲得を優位に進めたい狙いもあるとみられる。
中国が宇宙開発に力を入れる背景には、習近平国家主席が宇宙開発を国家の重点事業と位置づけていることが大きい。国民に「中国はすごい国だ」と誇りを持たせるのと同時に、海外には中国の高い技術水準をアピールする狙いがある。
しかし、中国の宇宙開発には軍が深く関与しており、軍事利用への各国の懸念も強い。
1969年、「アポロ11号」で世界初の人類の月面着陸に成功した米国。近年は火星探査を優先してきたが中国に刺激され、関心は再び月に向かいつつある。
トランプ米大統領は2017年末、オバマ前政権の方針を見直し、月探査に力を入れると宣言。月を周回する宇宙ステーションを26年ごろに建設、宇宙飛行士を再び月面に送る構想だ。
月の水資源は将来、月面基地の飲み水や野菜栽培などに使える。米国はいち早く探査できれば、水資源の利用で主導権を握れる可能性が高いと考えている。
欧州宇宙機関(ESA)は独自の月面拠点「ムーン・ビレッジ」建設を掲げ、有人月探査も視野に入れる。日本は07年、月探査機「かぐや」打ち上げに成功。月面の詳細な地図を作製した。21年度の月面着陸をめざし、無人探査機の開発を進めている。
(C)朝日新聞社
解説者
益満雄一郎
朝日新聞広州支局長
記事の一部は朝日新聞社の提供です。