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2019年2月10日付
沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移す計画をめぐり、埋め立ての是非を問う県民投票が24日に投開票される。五つの市の市長が「参加しない」と表明したが、選択肢を三つにしたことで態度を転じ、全市町村で実施されることになった。
県民投票は「辺野古の海を埋め立てることに対する県民の意思を明確に示したい」と、市民団体「『辺野古』県民投票の会」が実施に向けて署名を集めた。条例を作るよう求めるには、有権者の50分の1が必要だが、約4倍にあたる9万2848筆が集まった。
昨年10月の県議会で、埋め立てに「賛成」か「反対」かを選ぶ内容の条例が可決され、玉城デニー知事は日程を2月14日告示、24日投開票と決めた。県単位での住民投票は、1996年に沖縄で米軍基地の整理・縮小などについて賛否を問うて以来2回目だ。
ところが、宮古島市の下地敏彦市長が「実施しない」と表明。関連する予算案が市議会で2度にわたって認められなかったためで、普天間飛行場を抱える宜野湾市や、石垣市、沖縄市、うるま市の各市長も、次々と不参加を表明した。
5市長は玉城知事と距離を置く立場で、「賛成と反対だけでは民意はすくえない」「反対の結果が出ると、普天間飛行場の固定化につながりかねない」といったことを理由に挙げた。
「『辺野古』県民投票の会」の元山仁士郎代表(27)は、食事をしないハンガーストライキを宜野湾市役所前で始め、全県実施を求めた。
5市で実施されないと、有権者の3割が投票できない事態となる。危機感を抱いた県議会では、選択肢に「どちらでもない」を加える案が検討された。元山さんの体を張った訴えもあり、各会派が3択案に合意した。だが自民の一部は反発し、1月29日の臨時県議会では、条例改正案について全会一致とはならず、賛成多数で可決した。
これを受け、5市長は相次いで実施することを表明。一時は危ぶまれた全県での実施が、投開票日もずらすことなく実現することになった。
そもそもなぜ県民投票をする必要があるのか。昨年9月30日には、辺野古移設反対を掲げ続けた翁長雄志・前知事の急死を受けた知事選があり、同じ立場の玉城氏が39万票という過去最多得票で当選。知事選で2回続けて「辺野古ノー」の民意が示された。
ただ政府は、選挙結果を考慮することなく、「辺野古しかない」と工事を推し進めた。昨年12月には土砂投入を開始。辺野古の海が埋め立てられ始めている。
この埋め立てについて「ワンイシュー(一つの論点)」で沖縄の民意を示すしかないという危機感が、県民投票につながった。
玉城デニー知事
沖縄県議会で県民投票条例の改正案の採決で、2人が退席、5人が着席したまま反対したが、賛成多数で可決された=1月29日、那覇市
写真は埋め立てが進む米軍キャンプ・シュワブ沿岸部=1月13日 沖縄県名護市
どれも(C)朝日新聞社
解説者
伊東聖
朝日新聞那覇総局長
記事の一部は朝日新聞社の提供です。