朝日中高生新聞
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コンビニの24時間営業が転機?

2019年3月17日付

 人手不足に悩むセブン―イレブンの店主たちが24時間営業の原則を見直すよう求め、これを拒むセブンの本部と対立している。人口減少を背景に人手不足は深刻になっており、24時間営業は転機を迎えたのかもしれない。

見直し求める店主らのユニオンと、本部との対立は続くが…

セブン、一部店舗で時間短縮の実験へ

 国内のコンビニエンスストアは、24時間営業の店が多い。最大手セブンの本部はオフィスビルや駅構内にある店などを除いて24時間営業を徹底してきた。
 しかし、大阪府東大阪市にあるセブン―イレブンの店主は2月から、午前1~6時に店を閉め、1日19時間営業にしている。
 アルバイトの確保が難しく、自分が店頭に立ち続けるにも限界があるが、24時間営業しないのは契約違反として本部から違約金を求められた、と店主は言う。店主と本部の対立をきっかけに、コンビニ店の厳しい労働実態に改めて注目が集まった。
 これを機に、店主らでつくる団体「コンビニ加盟店ユニオン」は、24時間営業の原則を見直すようセブン本部に求め、団体交渉を要求した。
 セブン本部は、原則の見直しや団体交渉を拒む一方で、夜通しの営業はしない初めての実験を一部の店で実施することにした。営業時間を午前7時から午後11時までに縮めるもので、売り上げや客の反応などを調べる。
 実験は当初、本部が直営する10店で行う方針だったが、セブンの国内2万店余りのうち直営店はわずか2%。残りは、本部が外部から募った店主とフランチャイズ(FC)契約を結ぶFC店だ。
 「実験の対象にFC店も含めるべきだ」「直営店だけだと結果をごまかされかねない」という批判が店主から上がり、セブンは急きょ、FC店を対象に含める方向で検討を始めた。

人手不足で高騰するアルバイトの人件費が店の重荷

「便利さの競争は限界」との指摘も

 セブン1号店が東京・とよにオープンしてから40年余り。他社も含めて全国で5万5千店以上に増えたコンビニは、「社会インフラ」とまで言われるようになった。宅配便やクリーニングを受け付け、ATM(現金自動だしいれ機)を備える。住民票の写しを出すなど、行政サービスを担う店もある。
 その多くを占めるFC店の店主は、看板や運営方法などの提供を本部から受ける見返りに、売れ行きに応じた一定のお金を本部に払う。夜間を中心にアルバイトの確保が難しくなっているが、高騰する人件費は店主の負担だ。夜間の売り上げが少ない店では、24時間営業は重荷になりつつある。本部の側も、レジの性能を上げるなど人手不足への対策を進めるが、追いついていない。
 24時間営業の見直しは直営店の割合が高い外食産業で先行している。例えば、ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」は2017年1月末までに全店でやめた。「便利さを競う競争は限界」という指摘が、専門家から出ている。

記者会見する「コンビニ加盟店ユニオン」の酒井孝典・執行委員長と、「セブン―イレブン東大阪南上小阪店」で時短営業を続けている松本実敏さんの写真
記者会見する「コンビニ加盟店ユニオン」の酒井孝典・執行委員長(左)と、「セブン―イレブン東大阪南上小阪店」で時短営業を続けている松本実敏さん=2月27日、東京都千代田区永田町の衆議院議員会館
(C)朝日新聞社

コンビニの数と従業員の時給が年々上がっていることを示すグラフ
(C)朝日新聞社

解説者
すみかわたく
朝日新聞東京本社
経済部記者

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