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2019年8月11日付
アフリカ開発会議(TICAD)が8月28~30日、横浜市で開かれる。アフリカから多くの首脳が集まり、経済、社会、平和と安定をテーマに話し合う。成長が見込まれるアフリカに中国などが関わりを強めるなか、日本は存在感をアピールする。
TICADは1993年に日本政府が主導して設けた国際会議で、今年で7回目。国際連合、世界銀行、国連開発計画、アフリカ連合委員会と共催する。かつては5年に1度だったが、第5回以降は3年に1度開かれている。
開かれたきっかけは、冷戦後、先進国のアフリカ支援への関心が低下したことにある。日本としてアフリカの重要性を訴え、国際社会の関心を呼び戻すねらいがあった。
東京で開かれた第1回会合には、アフリカの国々や国際機関などのべ約1千人が参加し、国際支援の指針を示す「東京宣言」を採択した。
当時の細川護煕首相は会合で、「わが国は第2次大戦後、国際社会から支援を得てきた。これまでの恩義に報いるためにも、アフリカ支援に向けての役割を果たしていく」と表明。政府の途上国援助(ODA)や人的交流などの「人づくり」を通じてアフリカ開発に取り組む姿勢を打ち出した。
近年、TICADをめぐる状況は大きく変わってきた。開始当初、フランスなどが旧植民地の国々と設けていた会議を除くと、アフリカ全体の支援に関わる会議はTICADだけだった。しかし、中国が2000年にTICADに似た国際会議「中国アフリカ協力フォーラム」を設立。資源獲得をねらって経済関係を強化しはじめた。
これに合わせるように、TICADでも民間投資の重要性が叫ばれるようになる。08年の第4回会合では、当時の福田康夫首相が「成長のためには民間投資がなくてはならない」と語り、民間企業によるアフリカ投資の促進を訴えた。
とはいえ、資金力の差がある。日本は16年、第6回TICADで「3年間で官民で総額300億ドル(日本円で約3兆2千億円規模)」の投資を表明。これに対し、中国は昨年9月、中国アフリカ協力フォーラムで「3年間で600億ド ル」の支援を打ち出した。日本外務省関係者は「量的にはかなわない」と認める。
アフリカで見込まれる人口増加や経済成長を背景に、中国のほか、韓国、インド、米国などもアフリカ協力の会議を立ち上げ、ライバルは増えつつある。
最近では、中国が交通や公共施設などのインフラに巨額の投資をし、投資を受けた相手国が借金の返済に苦しむ「債務のわな」が問題になっている。これに対し、日本政府は、投資額だけでなく、人材育成や投資の進み具合を公表するなどの透明性をアピールし、違いを打ち出している。外務省関係者は第7回TICADに向け、「日本の存在感を確保するため、魅力的な政策をとりまとめて、示したい」と話す。
アフリカ支援などを話し合う7回目の「アフリカ開発会議」(TICAD7)関係閣僚会議=7月23日、首相官邸
どちらも(C)朝日新聞社
■解説者
竹下由佳
朝日新聞政治部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。