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2019年9月1日付
東京電力ホールディングスは7月、福島第二原子力発電所(福島県富岡町、楢葉町)の全4基を廃炉にすることを正式決定した。すべての廃炉が終わるまで40年以上としているが、約1万体ある使用済み核燃料や廃棄物の搬出先などは決まっておらず課題は多い。
2011年の東日本大震災の津波で、東電の福島第一原発(同県大熊町、双葉町)は電源を失い、冷却設備を動かせなくなった。そして、6基のうち3基が「メルトダウン」という核燃料が溶ける世界最悪レベルの事故を起こした。
第一原発から約10キロ南にある第二原発も4基のうち3基が原子炉を冷やす機能を失ったが、外部電源が一部生き残ったことで、かろうじて最悪の事態を避けることができた。
事故前、両原発は首都圏の電力の約2割を担い、長らく重要な電力供給をしてきた。だが、事故により、県内の避難者数が最大16万人(現在も4万人超)になった大きな要因となった。放射能をめぐる風評被害も県民を苦しめた。
東電は第一原発6基の廃炉を14年までに決めたが、第一原発より10年ほど新しく、通常の原発と同じ状態の第二原発については、存続も模索した。
だが、被害に苦しんだ県民の「県内全基廃炉」の声は根強かった。昨年6月、東電の小早川智明社長は第二原発について、福島県の内堀雅雄知事に「廃炉の方向で具体的な検討に入りたい」と初めて廃炉に言及。そして、今年7月31日に第一原発との廃炉作業を両立できるめどがたったとして、正式決定した。
廃炉が決まっても、すぐに作業が始まるわけではない。国への届け出、廃炉工程の計画認可が必要となる。着手しても、約1万体の核燃料の取り出し、それを一時保管する場所も必要となる。建屋の解体といった本格作業に入るのは、10年以上先とみられる。
これが通常の原発1基でも大変なのに、東電は溶け落ちた燃料(デブリ)の取り出しも抱える第一原発を含め、10基を並行して進める世界でも例のない作業に取り組むことになる。第一原発は約4千人が作業にあたるが、さらに数千人規模の人材を確保する必要性がある。
また、東電は核燃料を「県外に搬出する」と明らかにしているが、その行き先は決まっていない。これは第二原発だけの問題ではない。事故前に国内に54基あった原発は21基が廃炉となり、今後、大量の核燃料や廃棄物が出てくる。
一方、政府は核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを発電で再び使い、その燃料から出た高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を最終処分場に埋める政策を事故後も変えていない。
しかし、リサイクルした核燃料を使う原発自体が少なく、事実上破綻している。第二原発の廃炉から見えてくる課題は多い。
内堀雅雄知事(左)に、東京電力第二原発廃炉の正式決定を伝える小早川智明社長(中)=7月31日、福島県庁
東京電力福島第二原子力発電所=2017年1月撮影
どれも(C)朝日新聞社
解説者
石塚広志
朝日新聞福島総局記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。