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2020年2月2日付
国内の映画館への入場料金の合計金額を表す「興行収入」(興収)の2019年分が、00年以降で最高の2611億円を記録した。興収100億円をこえる大ヒット作が次々に出て、複数のスクリーンがある映画館「シネコン」が都市に広がってきたことが原因のようだ。
2019年は入場者数も1億9千万人を超え、00年以降最多だった。19年より前の興収1位は、250億円を超えるヒットとなった「君の名は。」や怪獣映画「シン・ゴジラ」が公開された16年。興収は2355億円、入場者数は1億8千万人だった。
19年の興収は「君の名は。」の新海誠監督の新作アニメ「天気の子」が140億円でトップ。ディズニーの名作アニメを実際の人が演じた実写版「アラジン」が121億円、人気アニメシリーズの「トイ・ストーリー4」が100億円を記録した。それに「アナと雪の女王2」もお正月を過ぎてから100億円を超える人気だ。
100億円を超えるヒットがこれほどたくさんあるのはめずらしい。18年は、ロックスターの半生を描いた「ボヘミアン・ラプソディ」だけだった。「名探偵コナン 紺青の拳」(93億円)、「ライオン・キング」(66億円)、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(61億円)などもヒットした。
映画の業界では、お正月や春休み、夏休み、ゴールデンウィークのころが、たくさんお客さんが映画を見に行く時期と言われている。しかし、19年は、あまり映画館に人が行かないと言われている時期に公開された「翔んで埼玉」(2月、37億円)、「ジョーカー」(10月、50億円)といった作品が、予想以上の興収となった。これも全体の数字をおし上げることにつながった。
今は「ネットフリックス」のような動画配信サービスを使い、自宅でも映画を楽しめる。動画配信サービスが広がると、公開作品にとっては打撃になるとも考えられた。しかし、小さい画面では味わえない大迫力をスクリーンで楽しもうとしている人のための作品が増えてきていると考える専門家もいる。
それを可能にしているのが都会でのシネコンの広がりだ。1990年代に現れたシネコンはもともと、地方のショッピングセンターなどとセットで建設が進んでいた。しかし、2010年代に入ると、東京の新宿や日比谷といった街中にもシネコンが完成し、そこで大迫力の作品が見られるようになった。
今では、壁一面に広がる大画面と迫力の音声が楽しめる「IMAX」、映像に合わせて、いすが上下や左右に動いたり風や水が吹き付けられたりする「4DX」も登場して、家庭ではできない体験が味わえる。
ただ、19年はディズニーの人気シリーズの続編や新海監督の新作などの注目作品があり、もともと最高興収が予想されていた。「アナ雪2」を含めると3本が100億円超えとなったディズニーでみても、今年は19年ほど有名な作品の公開はない。それに今年は東京オリンピック・パラリンピックがあるから、夏休み公開の作品は観客が集まらないのではと心配する声もある。
解説者
小峰健二
朝日新聞東京本社文化くらし報道部記者
2018年3月に日比谷に開業したシネコン
(C)朝日新聞社
記事の一部は朝日新聞社の提供です。