朝日中高生新聞
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新通信方式「5G」 春に始まる

2020年2月9日付

 通信速度が今の数十倍速くなる新しい通信の方式「5ファイブジー」が今年の春に始まる。スマートフォンをより便利に使えるほか、医療や工場などの現場にも応用できそうだ。ただ、情報が抜き取られるなどの危険性も高まるため、対策が欠かせない。

10年おきに進化する通信技術

4Gだと5分→3秒で済む速さに

 「5G」とは、携帯電話などに使われる新しい通信方式のこと。
 Gは英語の「Generation」(世代)の頭文字で第5世代の通信方式という意味だ。世界では昨年4月に米国と韓国が初めて5Gのサービスを開始した。技術面では、華為技術(ファーウェイ)などの中国勢が先行している。日本では、NTTドコモなどの携帯電話会社が春から始める予定で、今年は日本の「5G元年」とも言われている。
 通信の技術は約10年おきに進化してきた。1980年代の「1G」では電話で話せるだけだったが、世代ごとに通信速度が上がり、今の「4G」では動画が見られるほどになった。5Gではさらに数十倍も速くなる。
 原理はこうだ。通信を高速道路に例えると、そこを走る車がデータにあたる。5Gでは今まで使っていなかった土地に幅が広い大きな道路をつくった。そうすると車がたくさん通れるようになる。今の4Gでは2時間の映画をダウンロードするのに5分かかるが、5Gでは3秒で済む。

通信の遅れが少ないことが魅力

IoT応用に期待 安全対策に課題

 速度が速くなると便利になる。加えて、通信の遅れが少ないことも5Gの特徴だ。例えば、通信アプリで通話しているときに、自分の声や映像が相手にはちょっと遅れて届くことがあるが、これが通信の遅れで、5Gでは短くなる。そうすると、高い安全性が求められる医療や自動車の運転にも使えるようになる。
 医療では、ロボットを使って、高精度映像を見ながら離れた場所から診療ができるようになるかもしれない。通信に遅れがあるとうまく操作できずにとても危ない。
 自動車もスマホのように通信し、運転手なしで自動運転ができるようになると期待されている。また、同時にたくさんの機械をインターネットにつなぐことができるのも5Gならでは。例えば、工場にはたくさんの機械があるが、それを自動で効率よく動かせるようになる。「IoT」(モノのインターネット)と呼ばれる技術だ。
 しかし、まだまだ課題は多い。携帯電話会社は5Gの電波を出す基地局を急いでつくっているが、まだ少ない。多くの場所で使えるようになるにはあと数年はかかる見こみだ。また、いろんなモノがネットにつながると、情報が抜き取られたり、乗っ取られたりする危険性も高まる。5Gを普及させるには安全対策が不可欠と言える。

解説者
いのうえりょう
朝日新聞東京本社
経済部記者

5Gの主な特徴を示した図
どれも(C)朝日新聞社

総務省が試算した5Gの経済効果の円グラフ

ソニーの5Gを利用したスポーツ中継システムの写真
ソニーの5Gを利用したスポーツ中継システム。カメラの映像を5G対応スマートフォンで飛ばします=1月8日、アメリカ・ラスベガス

中国の華為技術(ファーウェイ)が展示する5Gスマホの写真
中国の華為技術(ファーウェイ)が展示する5Gスマホ=1月8日、アメリカ・ラスベガス

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