朝日中高生新聞
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米軍がアフガニスタンから撤退を開始

2020年4月5日付

 アフガニスタンで武装勢力タリバーンと戦ってきた米軍が、撤退を始めた。もう18年も戦い続けていて、多くの人が亡くなったり、お金がかかりすぎたりしているからだ。米軍がいなくなったら、ますます国が混乱するのではないかと心配されている。

きっかけは2001年の同時多発テロ

追放されたタリバーン勢力回復

 アフガニスタンは日本の2倍近い国土の多くが山に覆われ、乾燥している。約2900万人の国民のほとんどがイスラム教徒だが、さまざまな民族が住んでいることもあって戦いがやまず、難民を生み続けている。
 千年以上前には仏教が信じられていた地域もあり、「バーミヤンの大仏」などの古い遺跡がある。しかし今は治安が悪く、外国人観光客はほとんど見かけない。
 米軍が駐留したきっかけは2001年に米国で起きた同時多発テロだった。米国はテロを起こしたアルカイダという組織のリーダーが、アフガニスタンに隠れていると知っていたから、アフガニスタンのタリバーン政権に対して、リーダーの引き渡しを要求。それをタリバーンは断った。
 これに怒った米国は、アフガニスタンに米軍を派遣し、タリバーンを追い出そうとした。それ以来、米軍とタリバーンの戦いが続いている。
 タリバーンはアフガニスタンの南部で1990年代に生まれた武装勢力のこと。戦争に明け暮れていた政治家たちを倒し、イスラム教の教えを厳しく守る国をつくろうと呼びかけた。若いイスラム教徒がたくさん集まり、96年には首都カブールを攻め落とし、新しい政権をつくった。
 2001年に米軍の攻撃を受けて追い出された後は、しばらく山奥に隠れていた。隠れながらも、こっそり麻薬や宝石などを売ってお金をため、2000年代に力を取り戻した。今では国の半分ほどのエリアで活動している。

トランプ政権とタリバーンが和平合意

平和の約束守るか不安広がる

 アフガニスタンには現地の軍隊や警察がたくさんいるが、タリバーンに負けてばかり。危険な割に給料が安く、やる気が出ないようだ。
 そこで米軍がお金をかけて一緒に戦っているが、なかなか勝てない。これまでに米軍の兵士2400人以上が死亡。誤って一般人を殺してしまうことも多く、反感も買っている。戦いを続けても、いいことがない。
 そんなとき、新しく米大統領になったのがトランプ氏だった。アフガニスタンの戦いを「無駄」と考えて、米軍を撤退させると決めた。
 米軍がいなくなると、現地の軍隊や警察は心細い。タリバーンがまた首都に攻め込み、国を支配するのではと心配する声が上がっている。
 そんな心配をぬぐうために、米国はタリバーンと2月末に約束を交わした。米国が戦いをやめて軍を撤退させる代わりに、タリバーンがアフガニスタンを平和にすると誓うものだ。
 今のところタリバーンは「約束を守る」と言っているが、本当かどうかは分からない。かつてタリバーンは女性に対し、「勉強するな」「顔を出して歩くな」と言っていたこともある。また住みにくい時代に逆戻りするのではと市民は恐れている。

解説者
のりきょうまさとも
朝日新聞アジア総局員

握手する米軍の担当特使とタリバーンの幹部の写真
アフガニスタンの駐留米軍撤退に向けた合意に署名し、握手する米軍の担当特使(左)とタリバーンの幹部=2月29日、カタール・ドーハ
どれも(C)朝日新聞社

アフガニスタン中部バーミヤンの学校で学ぶ子どもたちの写真
アフガニスタン中部バーミヤンの学校で学ぶ子どもたち=2017年9月

アフガニスタンの駐留米軍人数のグラフ

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