- 日曜日発行/20~24ページ
- 月ぎめ967円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2020年4月12日付
2019年の国内のインターネット広告費が前年より19.7%多い2兆1048億円となり、初めてテレビの広告費を抜いた。電通がまとめた。テレビなども合わせた国内の総広告費は6兆9381億円。前年と同じ条件で比べると、8年続けて前年を上回った。
インターネット広告費は、14年から6年連続で前年比ふた桁の増加率で伸びており、初めて2兆円を突破した。広告費全体に占める割合は30.3%。番組のコマーシャルを中心としたテレビ広告費は、地上波と衛星放送を合わせて前年比2.7%減の1兆8612億円だった。
ネット広告は09年に新聞を抜き、それから10年でテレビも抜いた。
急伸が続く理由は、ネット環境の充実やスマートフォンが広く普及したことが大きい。
例えば、検索サイトで単語を調べたときに、それに関する商品などの広告が表示されることがある。これは、検索連動型と呼ばれる広告だ。SNSなどスマホのアプリに表示される広告のほか、ネット通販の出店者が出す広告も増えている。
ネット利用者の多くは、米国のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのサービスを使っている。「GAFA」と呼ばれるこのIT大手4社は、集めたビッグデータなどをもとに、個人個人にあわせた広告を出せることを強みにしている。
ただ、ネット広告をめぐっては課題もある。広告だと明示しないでブログなどで商品を紹介する「ステルスマーケティング」や、広告費をだまし取るために不正プログラムを使って広告のクリック数などを偽る「アドフラウド」(広告詐欺)と呼ばれる問題も起きている。
一方で、テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマスコミ4媒体の昔ながらの広告費用(ネット事業分を除く)の合計は、前年比3.4%減の2兆6094億円だった。
4媒体はいずれも前年を下回った。景気の影響を受けやすく、昨年10月の消費増税に加え、長雨や冷夏といった天候不順、米中貿易摩擦を受け、企業が広告を出すのを控えたという。
ただ、これらの4媒体がネット事業で得たデジタル広告費は計715億円となり、前年より22.9%増えた(この分はネット広告費の中に含まれている)。
特にテレビは46.7%増えた。ネットテレビ局「AbemaTV」や見逃し配信サービス「TVer」など、パソコンやスマホでも見られるサービスが広がったことが大きいという。
雑誌のデジタル広告費も20.2%増で、紙の落ち込みをデジタルで補っているほか、ラジオも25.0%増だ。これらの媒体は、読者やリスナーの年代や性別が明確なものが多いため、企業も狙いを絞った広告を出しやすいという。
解説者
土居新平
朝日新聞東京本社経済部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。