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2020年6月7日付
米国の軍隊を管理する国防総省が4月下旬、不思議な動き方をして空中を飛び回る物体の映像を公開した。その正体をめぐって世界中で話題になった。本当は、いったい何だったのだろうか。これまでにも、こんな物体は見つかっていたのだろうか。
公開されたのは2004年と15年に、米海軍の軍用機が飛行中に撮影した白黒の映像だ。それぞれ約30秒~1分15秒の長さで、撮影した場所や時間帯は明らかにされていない。
正体は分からないが、たしかに何かが海の上で高速で飛んだり、空中で回転したりする姿が映っていた。飛行機を操縦していたパイロットが「あれを見ろ。回転しているぞ」と、驚いたような声をあげる様子も収められている。
今回の発表で米国防総省は「UFO」とは言っていない。UFOは「未確認飛行物体」(Unidentified Flying Object)の頭文字。その言葉を使わずに「空中現象」(aerial phenomena)で、正体は「未確認」(unidentified)としている。UFOと言うと、実際には宇宙人の乗り物を想像する人が多いからだろう。
UFOの歴史は古い。1947年には米国の実業家が自家用機でワシントン州上空を飛んでいたとき、奇妙な形をした九つの物体が飛ぶのを目撃したとされている。飛び方が「皿を水面に投げ、弾ませたときに似ている」と語ったので、日本語では「空飛ぶ円盤」とも言われた。
47年は「UFO元年」と呼ばれている。ニューメキシコ州ロズウェル近郊に「謎の飛行物体」が墜落した事件も起きた。「ロズウェル事件」と呼ばれ、「宇宙人」の遺体を回収したといわれて大騒ぎになった。
だが半世紀後の97年、墜落したのは高度飛行用の気球で、「宇宙人」は実験用のマネキンだった、との報告書を米軍が発表した。
UFOの大半は、光の屈折などの自然現象のほか、飛行機や人工衛星、気球、鳥などを見誤ったといわれている。でも、どうしても説明がつかなかったものもある。米国防総省は、秘密裏にUFOを調査していたことは認めている。
日本では55年に「日本空飛ぶ円盤研究会」が結成された。SF作家の星新一や、「日本の宇宙開発の父」と呼ばれた科学者の糸川英夫も加わり、1千人を超える会員がいた。SF専門ではない作家の三島由紀夫も会員で、自宅の屋上から双眼鏡を手に空を観測していたそうだ。「現代生活の一つの詩として理解します」と会報に寄稿している。
未確認生物(UMA)というのもある。日本で有名なのはツチノコ(槌の子)。ヘビに似て、胴体はビール瓶のように太く、頭は三角形。各地で目撃情報が寄せられているが、生物学的には確認されていない。
中国地方の山奥では1970年代、ゴリラのような生物の目撃情報が相次いだ。「ヒバゴン」と呼ばれ、警察もパトロールをしたが、最近は目撃情報も少なく、正体は不明のまま。他にも北海道屈斜路湖の「クッシー」、鹿児島県池田湖の「イッシー」などもある。
解説者
小泉信一
朝日新聞編集委員
ツチノコの手配書の立て札=2019年5月、岐阜県東白川村
どちらも(C)朝日新聞社
記事の一部は朝日新聞社の提供です。