朝日中高生新聞
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新型コロナ対策で都道府県の「貯金」激減

2020年8月9日付

 新型コロナウイルスへの対策で急に必要になったお金を用意するため、多くの都道府県が「財政調整基金」という貯金から出費している。朝日新聞が各都道府県に聞くと、取り崩しの額は合計1兆円を超えることが分かった。

毎年積み立ての「財政調整基金」を支援金や医療設備などに

東京は9割取り崩し 備えに不安も

 多くの都道府県は店に休業を要請する代わり、ものが売れなくなった店などに支援金を出した。少なくとも11都府県で計3055億円が使われた。臨時の医療施設にするためのプレハブ整備(神奈川県、約65億円)、検査場の設置・運営(北海道、約7億円)など、医療関係の使い道も多かった。
 朝日新聞が7月初めの時点で47都道府県に聞くと、「財政調整基金」という自治体の貯金のうち、全体で6割近くを使っている。いざというときのために毎年少しずつ積み立てたものだ。今年3月末の時点では1兆8868億円あったが、新型コロナウイルス対策で1兆852億円が使われていた。
 都道府県別で最も多かったのは、9割を取り崩した東京都の8521億円。大阪府の796億円、神奈川県の167億円が続いた。いずれも人口が多い都市部で、感染者の数も多い。
 一方で、後で国から配られるお金を見込むなどして、埼玉、千葉、岐阜、京都、兵庫の5府県は取り崩さなかった。
 都道府県は4月から翌年3月までに使うお金を「予算」として計画的に使っている。財政調整基金が減りすぎると、この先お金が足りなくなったり、災害が起きたりしたときの備えが手薄になる。新型コロナの影響で景気が悪くなると予想されていて、都道府県の収入である税収も落ち込む可能性が高く、どこも不安を抱えている。
 もともと新型コロナは、繰り返し感染拡大が起こると言われている。春に感染が広がった際、府内の市町村と半分ずつお金を出し合い、店への支援金とした大阪府の担当者は、「次は同じような手厚い対応はできない」と話す。

五輪・パラ資金、県庁建て替え費用…

やりくり策はいろいろ 貯金残す工夫

 企業や人口が多く、税収がたくさんある都市部は、貯金にあたる財政調整基金の金額も大きくなる傾向がある。特に大企業が集まる東京都はけた違いで、今年3月末の時点で貯金の額は約9344億円もあった。他の46道府県をすべて合わせた額とほぼ同じだ。
 都道府県別でみると大阪府の約1561億円が2番目に多く、愛知県の953億円、神奈川県の約613億円が続く。北海道、富山県、鳥取県、福岡県など13の道府県は100億円以下だった。
 この「貯金」の他に使えるお金はないか、自治体は知恵を絞っている。千葉県や神奈川県などは、東京五輪・パラリンピック関連のために用意していたお金をコロナ対策に回した。岐阜県は「災害対応や収支不足に備えて、財政調整基金はできるだけ残したい」という思いから、県庁を建て替えるために積み立てていたお金を取り崩した。
 東京はほとんど「貯金」を取り崩したが、実はまだ余裕がある。財政調整基金の他に、「防災まちづくり」といった特定の目的のための基金が約30ある。すべて合わせると、取り崩した財政調整基金と同じ程度の約9千億円もの残高がある。

【財政調整基金の取り崩し額の上位】

①東京都  8521.2億円
②大阪府  796.5億円
③神奈川県 167.1億円
④茨城県  145.5億円
⑤石川県  108.8億円

【残高減少率の上位】

①石川県  91.9%
②東京都  91.2%
③山口県  88.3%
④茨城県  81.2%
⑤秋田県  76.0%

■解説者
ささがわしょうへい
朝日新聞大阪本社社会部記者

東京都庁の写真
東京都庁=4月、東京都新宿区
(C)朝日新聞社

大阪府庁の写真
大阪府庁本庁=2019年11月、大阪市
(C)朝日新聞社

会見する石川県の谷本知事の写真
会見する石川県の谷本正憲知事=5月、石川県金沢市
(C)朝日新聞社

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