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2015年4月19日付
中国が設立を呼びかけた、アジアインフラ投資銀行(AIIB)という新しい銀行が注目を集めている。これまで、国際的な金融機関は先進国がリードしてつくってきたが、急に成長してきた中国の提案に多くの国が賛成し、「創始メンバー国」57カ国が確定した。参加を見合わせている日本の態度も焦点の一つだ。
AIIBは中国の習近平国家主席が2013年秋、設立を呼びかけた。今年中の設立を目指している。
アジアの国々が今後も成長を続けるには、道路や鉄道、港湾といったインフラが足りないと言われている。建設にかかる多額のお金はそれぞれの国の財政や、民間銀行からの借金だけではまかなうことができない。そこで、多くの国がお金を出し合う国際金融機関を作ってそこからお金を貸し出すという発想だ。
こうした国際金融機関には既に、世界銀行(世銀)を中心としたグループや、各大陸の開発銀行がある。アジアにも1966年に設立されたアジア開発銀行(ADB)がある。日本はADBに最も出資したお金が多い国として、米国とともに主導してきた。
ところが、これまでの機関だけでは、アジアで必要とされる建設資金をまかなうにはまだ足りない。さらに、中国などの新興国は、せっかく力をつけてきたのに、今までの体制では先進国から十分な発言権が与えられていないという不満が大きい。中国の提案には、こうした背景もあった。
AIIBは昨年10月の設立合意の時に賛同した国は21カ国で、ほとんどが途上国だった。財政に不安のある国も多く、このままではAIIBが市場からお金を借りる時の「格付け」が低くなってしまうことが心配されたが、今年3月に入り、事態は大きく動いた。
英国を筆頭に、ドイツ、フランス、イタリアと欧州の主要国が軒並み参加を表明した。アジア太平洋で注目されていた韓国やオーストラリアも加わり、中国財務省によると、「創始メンバー国」は57カ国にのぼった。
各国には、AIIBに参加すれば、銀行が融資する大きなプロジェクトに自国の企業が参加するのに有利になる、との期待がある。今までの国際金融機関に問題がある、という中国の意見に賛成する国も多い。
ただ、AIIBでは提唱国の中国の権限が強くなりすぎる心配もある。これから銀行の仕組みをつくっていく上で、集まった資金が正しく使われるようにする制度にすることが重要だ。
この心配を強調して、参加を見送っているのが日本や米国だ。日本は似たような目的のADBを主導しているだけに、AIIBにまた巨額のお金を出資することには慎重になっている。一方、「参加するべきだ」との意見もあり、論争は続きそうだ。
(C)朝日新聞社
中国の習近平国家主席
(C)朝日新聞社
解説者
斎藤徳彦
朝日新聞中国総局
記事の一部は朝日新聞社の提供です。