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2015年5月24日付
神奈川県の箱根山で、観光客でにぎわう大型連休中に火山性地震が増え、気象庁は噴火警戒レベルを上げた。箱根町は大涌谷周辺の立ち入りを規制、噴火への警戒が高まり、観光への影響も出ている。群発地震はいつまで続くのか、噴火予知はできるのか。
箱根山で火山性地震が増え、大涌谷での噴気の勢いも強くなり、気象庁は3日に「高温の水蒸気が突発的に噴き出す可能性がある」と注意を呼びかけた。6日には「小規模な噴火が発生する可能性がある」として、噴火警戒レベルをレベル1(平常)からレベル2(火口周辺規制)に引き上げた。箱根町は大涌谷周辺の立ち入りを禁じ、大涌谷をわたるロープウェーは全面運休となった。
宿泊予約のキャンセルなど観光産業に影響が出始めている。
箱根町は、規制区域は箱根のごく一部だとして、ほとんどの地域は安全だと呼びかけている。
警戒レベルは、5段階で噴火の切迫度を示し、防災対応に直結する。火山がどう変化したらレベルを上げ、どんな対応をするか決めた全国の30火山で導入されている。御嶽山(長野県・岐阜県)などはレベル3(入山規制)、レベル2は7火山に出されている。最近では、吾妻山(山形県・福島県)が昨年12月にレベル2になり、レベルが導入されていない蔵王山(宮城県・山形県)も4月にレベル2に相当する「火口周辺警報(火口周辺危険)」が出た。
警戒レベルは、引き下げの判断が難しい。活動が落ち着いても、一時的なのか、終息したのか、すぐには見極められない。
日本には110の活火山があり、気象庁は噴火したときの影響が大きい47火山を24時間体制で監視している。観測は、気象庁だけではなく、大学や国の研究機関も担っている。しかし、観測機器も観測結果を判断する人材も不足している。噴火の予知は簡単ではない。昨年、多くの登山者が犠牲になった御嶽山も噴火時点では警戒レベル1だった。
2000年の有珠山(北海道)のように、予知が成功した例もあり、噴火予知は不可能というわけではない。突然起きる地震と違い、地下からマグマが上昇してくるなどで、前兆現象が観測しやすいからだ。
ただ、どんな前兆が噴火につながるかの判断は、何回かの噴火を観測したデータがなければ難しい。箱根山は12~13世紀に大涌谷で水蒸気爆発をして以降、噴火しておらず、近代も噴火を繰り返してきた有珠山のような観測データがない。
人間の一生よりも、ずっと長い時間スケールで起きる火山噴火を予知するには、地道に観測を長年続け、人材も育成するしかない。
噴気が上がる大涌谷=10日、神奈川県箱根町、朝日新聞社ヘリから撮影
(C)朝日新聞社
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解説者
黒沢大陸
朝日新聞編集委員
記事の一部は朝日新聞社の提供です。