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2015年6月7日付
2020年の東京五輪・パラリンピックの開催が決まったのをきっかけに、「スポーツ庁」が10月1日に誕生する。5年後の大会に向けたトップ選手の強化・育成だけでなく、学校の部活動やお年寄りの健康増進といったスポーツ政策全体を担う。
なぜ、スポーツ庁ができるのか。一つは、複数の省庁に分かれた「縦割り」をなくすのがねらいだ。
これまでは、例えば、競技場など施設の整備は国土交通省、外国とのスポーツ交流は外務省、障害者の健康づくりは厚生労働省など、担当する省庁がバラバラに分かれていた。
スポーツ庁は文部科学省のスポーツ・青少年局を母体に、七つの府省から職員23人を集め、約120人体制でスポーツ関係の施策を効率良くできるようにする。
「スポーツ庁を作ろう」という考えは30年以上前からあったが、なかなか実現しなかった。それが、2年前に20年東京五輪・パラリンピックの開催が決まると、一気に動き出した。
国は20年の五輪で、金メダル獲得数で世界3位になることを目標にしていて、今年度は五輪関連の強化費に、前年度から22億円増やして63億円を費やしている。
パラリンピック選手の強化も、スポーツ庁が担当する。下村博文・文部科学相は「パラリンピックに力を入れることで、障害者スポーツや障害のある人への健康にもつながっていく」と説明する。
ただ忘れてはいけないのは、スポーツ庁は20年五輪・パラリンピックのためだけを見据えた組織ではない、ということだ。子どもからお年寄りまで、誰もがスポーツをすることの楽しさを味わったり、健康で暮らせたりするような政策を考えていくことも、とても大切な使命となる。
例えば、中学校や高校の部活動や体育の授業といった、子どもの健康や体力づくりに関わる分野も、スポーツ庁の役割だ。
日本では高齢化が進み、医療費は右肩上がりで増えていて、12年度は約39兆円。みんながスポーツをすることで医療費が7.7%抑えられるという試算もある。
スポーツ庁として組織は一本化されるが、各省が持っていたスポーツ関連予算はバラバラのまま。予算をスポーツ庁に集中することについて、各省の抵抗が強かったためだ。このやり方で本当に「縦割り」がなくなり、効率よく政策を進められるのか疑問の声もある。
初代の長官は、1964年の東京五輪のサッカーに選手として出場し、ゴールを決めた川淵三郎さん(78)や、84年のロサンゼルス五輪の柔道で金メダルに輝いた山下泰裕さん(58)らの名前が候補として挙がる。すでにある省庁のしがらみにとらわれず、改革を進める強いリーダーシップをとることが、長官には求められる。
(C)朝日新聞社
解説者
前田大輔
朝日新聞スポーツ部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。