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2015年7月19日付
世界各地で迫害や紛争から逃れる難民が増えている。昨年は自国内で故郷を追われた人を含めて過去最多の約6千万人にのぼった。日本では難民として認められる人はごくわずかだが、一方で申請する人は急増している。救いの手をどう差し伸べるべきなのか。国際社会の姿勢が問われている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、難民と国内で避難を強いられた人の合計は昨年、5950万人になった。前年より830万人多かった。難民の発生国はシリアが最多だ。今も増えており、今月に400万人を超えた。ほかにアフガニスタンやソマリアも多かった。
1951年に採択された難民条約は、「人種や宗教、政治的な意見を理由に迫害されるおそれがあり、母国を出た人」を「難民」とする。だがその後、国際情勢は変わり、武力紛争や人権侵害などで難民化する人たちが増えた。
最近は、中東やアフリカから密航船で地中海を渡る難民が増え、受け入れる欧州各国の負担が課題となっている。ただ、海路は転覆などの危険も多いため、昨年は4千人以上が命を落とし、その8割は地中海で犠牲となっている。
日本は81年に難民条約に加入し、難民を受け入れてきた。
だが、昨年までに難民として認定した人は633人にとどまり、昨年はわずか11人。母国で政治的な考えから政府に従わなかった経験があり、帰国すれば迫害のおそれのある人などだった。このほか、人道的な配慮で在留を許可することもあって昨年は110人いたが、合計しても他国より数の少なさは際立っている。
その一方で、最近では難民の認定を求める申請が急増。05年は384人だったが、昨年は5千人で過去最多だった。前年からは1・5倍も増えた。国籍別では、ネパールが1293人で、トルコ、スリランカ、ミャンマーと続いている。
ただ、中には働くことを目的に日本での滞在を続けようとするなど難民とは言えない人の申請も多いため、本来は保護すべき人の認定に支障が出ているとの指摘もある。このため、政府は「本当に保護が必要な人とそうでない人を区別する」という方向で、制度の見直しを検討中だ。
見直し案では、これまで人道的な配慮で保護してきた人の対象があいまいだったため、保護する対象を明確にする▽明らかに難民には当たらない人の申請は本格的な調査に入る前に簡易的に処理する――などが検討されている。
駒井洋・筑波大名誉教授(国際社会学)は「どんな人が保護の対象になるのか具体性がない。一方で難民を偽装しようとする人の『取り締まり策』が目立つ。日本が国際的にどんな責任を果たすのかという視点が必要だ」と指摘する。
解説者
金子元希
朝日新聞社会部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。