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2015年8月16日付
大手電機メーカーの東芝が組織ぐるみで長年にわたり、もうけを実際よりも大きくみせる不正会計をしていた。その影響は深刻で、日本の企業全体の信用を落としかねない事態になっている。日本を代表する名門企業がなぜ、そんな不正に手を染めたのだろうか。
きっかけは、不正な株取引などを見張る証券取引等監視委員会に届いた内部告発だった。不正会計をにおわせる東芝の内部資料が添えられていた。
報告を求められた東芝は4月、不適切な会計があったと発表。普通なら5月中にすます2015年3月期の決算発表も延期した。
いったい東芝はどれぐらい決算をごまかしたのか。市場では不信が広がった。
不正をした企業が自分で自分を調べても、信用されにくい。そこで東芝は5月に外部の弁護士や会計士らを集めて第三者委員会をつくり、調査を頼んだ。
第三者委は、経営陣や社員らへの聞き取りを実施。300ページもの報告書を7月に公表し、大がかりな不正会計を明らかにした。
08年4月~14年12月の間、各事業部門が、経営陣のつくった無理な目標を実現しようと会計ルールを破り、計1518億円もの利益を水増ししていた。
報告書を受け、田中久雄社長をふくむ歴代3社長が責任を取り辞任。取締役16人のうち半数が辞任に追い込まれる事態になった。
東芝は8月中に、まだ発表していない15年3月期決算、過去の修正した決算、新経営陣の顔ぶれを発表する。そのうえで9月に臨時株主総会を開き、今後の態勢などについて株主に認めてもらう予定だ。
証券取引等監視委員会も東芝の会計を改めて調べる。不正の規模が大きかったり、悪質と判断されたりすると課徴金の支払いを命じられ、場合によっては刑事告発されることもある。
上場企業の経営者は、株主に示した利益目標を達成する責任を負う。だが、その成績表にあたる決算書づくりで、そもそも会計ルールが守られていなければ、投資家は何を参考にすべきかわからなくなる。
東芝は創業140年の歴史がある。テレビから原子力発電まで幅広い事業部門を持ち、従業員20万人が働く大企業だ。その企業の不正が長い間見過ごされてきたなら、日本の他の企業も疑いの目で見られかねない。
上場企業の決算は、会計士の集団である監査法人がチェックする決まりだ。東芝の決算を「適正」としてきた新日本監査法人にも、金融庁の調査が入る。
政府は昨年、日本の企業統治を強くすると打ち出し、世界から投資マネーを呼び込もうとアピールした。東芝の問題はその矢先に起き、海外メディアから批判された。米国では投資家たちが東芝に損害賠償を求める訴訟も起きている。まずは国内外の信頼を取り戻す再生策を示すことが、新経営陣の課題になる。
記者会見で頭を下げる田中久雄社長(手前)=7月21日
不正決算の舞台となった東芝本社ビル=東京都港区
どちらも(C)朝日新聞社
■解説者
志村亮
朝日新聞経済部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。