朝日中高生新聞
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急減速する中国経済に世界が不安視

2015年9月27日付

 世界最大の13億人の人口を誇る中国の経済が、これまでのような勢いで成長できなくなっている。8月中旬には、この不安が世界中に広がり、いっせいに株価が下がる現象が起きた。日本をはじめ、中国と貿易額が大きい国にも、景気への影響がありそうだ。

一人っ子政策、豊かになった人々…

安いものづくり拠点でなくなってきた

 中国の国内総生産(GDP)の実質成長率は1990年代以降、アジア通貨危機(97年ごろ)やリーマン・ショック(2008年)のようなときをのぞき、ずっと10%前後が続いていた。猛烈な勢いで日本を追い越したのは10年。GDPの金額で世界2位になり、いまは日本の約2倍ある。
 農村からたくさんの出稼ぎ労働者が都会にきて、安い給料でモノをつくる。世界中の企業が中国に工場を置くようになり、中国の成長の原動力につながった。
 ところが、働く人の人口は12年ごろから減り始める。一人っ子政策に加え、豊かになった人々の給料が上がり、土地や建物の値段もどんどん高くなる。「安いものづくり拠点」では、必ずしもなくなってきた。
 GDP成長率は、12年から7%台に落ち込む。昨年は90年以来の低水準となる7.3%。今年の政府目標はさらに低い7.0%だ。自動車の新車販売台数は4月から5カ月連続で前年を下回る。右肩上がりが続いた中国では、あり得なかったことが起きている。

製造業の貿易額の不振も著しい

日本国内の生産活動にも深刻な影響?

 中国のシーチンピン国家主席やリーコーチアン首相は「7%の成長だって、主要国の中ではトップグループだ」と説明する。確かに、マイナス成長になることもある日本より、はるかに高い。
 ただ、中国には、国内外の企業が工場などをつくりすぎてきた問題がある。「これからもまだまだ伸びる」と見込んでいたが、成長率が鈍って製品が売れなくなると投資が無駄になり、そのための借金も返せなくなってしまう。
 中国以外の国がさらに心配するのは、成長率以上に貿易の低迷が深刻なことだ。今年1~8月の貿易額は、昨年の同じ時期より7.5%減った。サービス業などの第3次産業は比較的好調だが、貿易の主役となる製造業は不振が著しい。
 多くの新興国にとって、中国は最大の貿易相手国。中国の工場に向けた原材料や部品の輸出が減れば、これらの国々の経済が大きく傾いてしまう恐れがある。8月中旬の世界同時株安は、こうした心配を映し出したと言える。
 日本にとっても、中国は米国に次ぐ貿易相手国だ。中国への輸出額は、今年に入ってすべての月で前の年を下回っている。好調だった日本の株価も、中国への懸念で乱高下を見せた。このような状況が続けば、日本国内の生産活動などにも深刻な影響が出かねない。

投資家らが株価ボードを見守る北京市内の証券会社の写真
中国株の下落で、北京市内の証券会社では、投資家らが「値下がり」を示す緑色一色に染まった株価ボードを見守っていた=7月8日
どちらも(C)朝日新聞社

中国の経済成長率のグラフ

斎藤徳彦さんの写真
解説者
さいとうとくひこ
朝日新聞中国総局

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