- 日曜日発行/20~24ページ
- 月ぎめ967円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2015年9月27日付
世界最大の13億人の人口を誇る中国の経済が、これまでのような勢いで成長できなくなっている。8月中旬には、この不安が世界中に広がり、一斉に株価が下がる現象が起きた。日本をはじめ、中国と貿易額が大きい国にも、景気への影響がありそうだ。
中国の国内総生産(GDP)の実質成長率は1990年代以降、アジア通貨危機(97年ごろ)やリーマン・ショック(2008年)のようなときをのぞき、ずっと10%前後が続いていた。猛烈な勢いで日本を追い越したのは10年。GDPの金額で世界2位になり、いまは日本の約2倍ある。
農村からたくさんの出稼ぎ労働者が都会にきて、安い給料でモノをつくる。世界中の企業が中国に工場を置くようになり、中国の成長の原動力につながった。
ところが、働く人の人口は12年ごろから減り始める。一人っ子政策に加え、豊かになった人々の給料が上がり、土地や建物の値段もどんどん高くなる。「安いものづくり拠点」では、必ずしもなくなってきた。
GDP成長率は、12年から7%台に落ち込む。昨年は90年以来の低水準となる7.3%。今年の政府目標はさらに低い7.0%だ。自動車の新車販売台数は4月から5カ月連続で前年を下回る。右肩上がりが続いた中国では、あり得なかったことが起きている。
中国の習近平国家主席や李克強首相は「7%の成長だって、主要国の中ではトップグループだ」と説明する。確かに、マイナス成長になることもある日本より、はるかに高い。
ただ、中国には、国内外の企業が工場などをつくりすぎてきた問題がある。「これからもまだまだ伸びる」と見込んでいたが、成長率が鈍って製品が売れなくなると投資が無駄になり、そのための借金も返せなくなってしまう。
中国以外の国がさらに心配するのは、成長率以上に貿易の低迷が深刻なことだ。今年1~8月の貿易額は、昨年の同じ時期より7.5%減った。サービス業などの第3次産業は比較的好調だが、貿易の主役となる製造業は不振が著しい。
多くの新興国にとって、中国は最大の貿易相手国。中国の工場に向けた原材料や部品の輸出が減れば、これらの国々の経済が大きく傾いてしまう恐れがある。8月中旬の世界同時株安は、こうした心配を映し出したと言える。
日本にとっても、中国は米国に次ぐ貿易相手国だ。中国への輸出額は、今年に入ってすべての月で前の年を下回っている。好調だった日本の株価も、中国への懸念で乱高下を見せた。このような状況が続けば、日本国内の生産活動などにも深刻な影響が出かねない。
中国株の下落で、北京市内の証券会社では、投資家らが「値下がり」を示す緑色一色に染まった株価ボードを見守っていた=7月8日
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
斎藤徳彦
朝日新聞中国総局
記事の一部は朝日新聞社の提供です。