朝日中高生新聞
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フォルクスワーゲンの不正問題って?

2015年10月18日付

 ドイツの大手自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)が、ディーゼルエンジンを載せた車の排ガス規制を逃れるため、不正なソフトウェアを使っていたことが問題になっている。まずアメリカで発覚し、ヨーロッパやアジアの国々(日本は基本的にゼロ)にも飛び火した。不正の可能性のある車は世界で約1100万台にのぼるという。

ドイツの大手自動車メーカー、販売増のため?

排ガスごまかし米で48万台リコール

 不正ソフトは、車が環境を汚す物質をどれだけ出しているか調べる排ガス試験中(ハンドルをあまり切らない)か、ふつうに道路を走っている(ハンドルを切る)か判断できる。
 試験中なら、排ガスをじょうする装置をしっかり動かし、いろいろな国や地域で定めている基準をクリアさせる。逆に道路を走っているときは装置の動きを弱めて燃費を良くさせる。ただ、環境を汚すちっ酸化物(NO)は、アメリカの基準の10~40倍にのぼっていたという。
 アメリカの役所は、VWに不正ソフトを載せた車約48万台をリコール(無料の修理など)するように命令した。問題発覚を受けて経営トップのマルティン・ウィンターコルン氏は辞任した。
 なぜ不正をしたのか、VWははっきりとした説明をしていない。自動車に詳しい専門家は、アメリカでたくさん車を売りたいため、不正をしたのではないかとみている。
 軽油を燃料にするディーゼル車は、ヨーロッパで人気が高い。VWの得意分野でもある。燃費が良く、力強い走りができる半面、排ガスには光化学スモッグや酸性雨につながるNO、大気汚染につながる粒子状物質(PM)が多い。環境問題が重視される時代になり、排ガス規制はどんどん厳しくなっている。特にアメリカは日本やヨーロッパより厳しい。

乗用車の売り上げはトヨタを抜き世界一だが

制裁金や不買運動で経営に大打撃も

 VWは高級車の「アウディ」「ポルシェ」も持つ企業グループだ。最近は「フォルクスワーゲン」の乗用車を中心に世界中で伸びており、2014年は約1千万台を売ってトヨタ自動車を抜き、販売台数で世界一になった。
 ただ、アメリカ市場では苦戦していた。厳しい環境基準をクリアするため、不正ソフトの使用に手を染めたようだ。
 この不正は、VWの経営に大きく響きそうだ。アメリカは不正への制裁として最大約2兆1600億円を払うように求める予定だ。リコールなどにかかる費用も巨額になりそうで、VWはひとまずそのために約8700億円を準備したが、足りなくなる可能性も高い。
 不正ソフトを載せた車を買った人たちが、裁判でお金を払うように求める動きもある。そもそもVWの車を消費者が買わなくなりかねない。

フォルクスワーゲンの不正のイメージ図

不正があったVWグループ車のブランド別内訳のグラフ
どちらも(C)朝日新聞社

田中美保さんの写真
解説者
なか
朝日新聞経済部

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