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2016年2月21日付
日本銀行が16日から、日本では初めてとなる「マイナス金利政策」を始めた。日銀が銀行から預かるお金の一部にマイナス0.1%の金利をつける政策で、企業や個人の借り入れや投資などが増える効果を見込む。ただ、副作用も指摘されており、日銀の狙い通りにいくかはわからない。
ふつう、お金を銀行に一定期間、預けると利息をもらえる。逆に、銀行にお金を預けるとお金を取られてしまうというのが「マイナス金利」の考え方だ。
今回の政策は、一般の預金者を対象としたものではない。日銀は「銀行の銀行」とも呼ばれ、銀行からお金を預かっている。このお金の一部に、日銀が0%より低いマイナスの金利をつけるのが今回の政策だ。
銀行は日銀に預けると、利息を取られて損をしてしまう。銀行がお金を日銀に預けっぱなしにせず、企業や個人への貸し出しを増やして損を取り返すと期待されている。
また、銀行が日銀に預けるお金の金利がマイナスになると、この低い水準の金利が銀行同士のお金のやりとりの目安になり、ほかのいろいろな金融商品などの金利も下がりやすくなる。世の中の金利が全体的に下がると、企業や個人がお金を借りやすくなるので、設備や家などを買う人が増え、結果的に景気がよくなると日銀は見込んでいる。
このマイナス金利政策はここ3、4年の間に、欧州で景気をよくしようと本格的に採用されてきた。
日銀はこれまで、銀行などにお金をどんどん渡し、世の中にお金がたくさん出回るようにして景気をよくしようとしてきた。だが、年明けから株安や円高が急に進み、景気が悪くなるおそれが出てきた。そこで欧州にならってマイナス金利政策を導入した。
ただ、一般の家庭や企業にとって不利益も出始めている。
銀行は日銀に利息を取られて損をしたり、金利が下がってもうけにくくなったりするので埋め合わせのために、預かるお金の金利の一部を下げ始めた。今後、いろいろな金融サービスの手数料を上げる銀行が出てくるかもしれない。
また、金融商品の中には、投資しても金利が下がっていてもうからないので、販売をやめるものも出てきた。
さらに、日銀が新政策を発表した後も、株安や円高が急速に進んだ。世界的に景気が悪くなるのではないかという不安が人々に広がっているためで、日銀の新政策の効果はなかなか見えてこない。
日銀は「投資や消費が増えるプラス効果は出てくる」と主張しているが、もし不十分だと判断すれば、銀行が預けたお金につける金利のマイナス幅を0.1%からさらに広げることも選択肢に入れている。
(C)朝日新聞社
衆院予算委員会でマイナス金利について答弁する日銀の黒田東彦総裁
(C)朝日新聞社
解説者
福田直之
朝日新聞経済部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。