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2016年8月21日付
「政治とカネ」の問題で舛添要一・前東京都知事が辞職したことを受け、7月31日に投開票された都知事選。元防衛相の小池百合子氏(64)が初当選した。都議会との関係や2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの費用負担など様々な課題を抱えての船出だ。
選挙戦では、自民、公明などが推薦する元総務相の増田寛也氏(64)、民進、共産など野党4党が推薦するジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)らと争った。小池氏は次点の増田氏に110万票超の差をつけ、約291万票を獲得。投票率は59.73%で、投票した人の4割超が小池氏に入れる圧勝だった。
争点はいくつもあった。舛添氏の問題から「公費の使い方」に対する姿勢や、東京五輪の施設整備費に関する都の負担割合のあり方、待機児童対策などだ。これらの争点に対し、各候補はそれぞれ前向きな姿勢を強調。政策の違いが見えにくいなか、小池氏はわかりやすいイメージ戦略を次々と繰り出した。
「崖から飛び降りる覚悟で挑戦する」。6月29日にいち早く出馬表明。所属する自民党から推薦を得られないと判断すると、自民党東京都連を「ブラックボックス」と批判し、「男性政治家ばかりの組織と戦うヒロイン」の構図を作り出した。さらに「都政の透明化」のため、東京都議会を解散するとも発言した。
街頭演説では、「女性リーダー」のイメージを前面に出し、「東京大改革」を掲げた。フェイスブックなどでイメージカラーの緑色を身につけた支援を呼びかけると、街頭演説では緑色のタオルなどを持って聴き入る有権者が増えた。
就任後、多くの課題が待ち受ける。選挙戦で訴えた「都政の透明化」の具体策や、増田氏を支援し、小池氏と全面対決した都議会自民党との関係、東京五輪の費用をどれだけ都が負担するかなどの問題だ。
2日に開いた就任会見では、自身が本部長となる「都政改革本部」を新たにつくると発表。同本部の下には「情報公開」と、費用負担の増大が懸念される「東京五輪・パラリンピック」の二つの調査チームをつくり、無駄な支出がないかチェックする。5日には、リオデジャネイロ五輪閉会式に出張する際、飛行機はビジネスクラスを使い、同行職員を大幅に絞って4人とすることも発表した。
選挙戦で小池氏は、都議会自民党との対決姿勢を鮮明にし、支持を得た。定数127のうち60議席を持つ自民と対立すれば、政策を決定して進めることはできないため、都議会自民党との関係も大きな課題だ。
小池氏は当選後、「知事も議員も都民が選んだ。議会のみなさまには協力をお願いする」と歩み寄る姿勢もみせる。お互いに出方をうかがっている状況で、9月下旬に開かれる都議会が注目されている。
都議会への姿勢
都議会の「冒頭解散」
公費の使い方について
舛添要一前知事の公私混同問題を検証する第三者委員会の設置
知事職
知事報酬の半減
五輪・パラリンピック
東京五輪・パラリンピック関連の予算や運営の適正化
防災・安全安心
住宅の耐震化・不燃化を2020年までに加速
育児・教育・暮らし
「待機児童ゼロ」へ保育所の受け入れ年齢、広さ制限の見直し
都独自の給付型奨学金の拡充
ペットの殺処分ゼロ
環境
エコハウスやスマートハウスの補助強化
ヒートアイランド対策の強化
職員から贈られた花束を手に、東京都知事選後に初登庁する小池百合子氏=2日、東京都庁
(C)朝日新聞社
解説者
小林恵士
朝日新聞社会部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。