朝日中高生新聞
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脅威を増す北朝鮮の核・ミサイル開発

2016年10月2日付

 北朝鮮が9月9日、5回目の核実験を行った。核爆弾を載せる弾道ミサイルの開発も並行して進めており、日本や米国などは、国連安全保障理事会の新たな経済制裁を求めた。ただ、中国をはじめ北朝鮮と関係の深い国々が制裁を守らない中、有効な開発阻止策は見つかっていない。

経済発展が停滞する中、5回目の核実験

「最終段階」と韓国政府は分析

 北朝鮮の核実験は今年1月以来で、同じ年に2回行うのは初めてだ。今年は弾道ミサイルも20発以上、発射しており、今後も核・ミサイル開発を続ける考えを明らかにしている。
 韓国政府は北朝鮮の核・ミサイル開発について「最終段階」(ユンビョン外相)とその攻撃能力を分析。軍事専門家の中には、北朝鮮が既にミサイルに載せられる核爆弾の小型化に成功し、韓国や日本が射程内に入った、との指摘もある。
 脅威の拡大を受け、韓国の世論調査では58%の人が自国の核保有に賛成(反対は34%)。日本政府も弾道ミサイルに対処するため、高額な防衛設備の拡充を検討している。
 北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、国連安保理はこれまで、「国際平和と安全に対する脅威」だとして北朝鮮を非難。何度も制裁を科してきた。日米韓など、北朝鮮人の渡航や貿易に安保理以上の厳しい独自制裁を行う国もある。
 その結果、北朝鮮では経済発展が停滞。地方ではする人や国を逃げ出す「だっぽくしゃ」もいる。それでも、韓国政府の分析によると、北朝鮮は今回の核実験に約500万ドル(約5億1千万円)を費やした。中国やロシアをはじめ制裁破りを繰り返す国が多く、開発に必要な外貨や物資が流れ込んでいるうえ、最高指導者・キムジョンウン氏の独裁体制で、限られた国の予算が人々の生活改善には回されていない可能性が高いためだ。

制裁が効果を持つかは、中国の協力しだいだが…

日米韓と中ロの足並みそろわず

 北朝鮮は今回の核実験の理由について、「米国をはじめとする敵対勢力の核戦争のかくと制裁騒動に対する実際的な対応措置の一環」と主張している。
 日米韓はこれまで同様、国連安保理による制裁強化を求めるが、新たな制裁が効果を持つかどうかは、北朝鮮貿易の9割を握る中国の協力が鍵になる。ただ、中国は、北朝鮮に対する過去の安保理制裁でも、ロシアとともに厳しい内容には反対。今回も北朝鮮を追い詰める全面禁輸などには、慎重な姿勢を崩していない。
 中ロにとって、北朝鮮は歴史的な友好国であるだけでなく、米国に対する安全保障上、「かんしょう地帯」として重要な位置を占める。締め付けで北朝鮮が混乱することも望んでいない。
 空振りが続く制裁に、日本の北朝鮮専門家からは、中国の協力に期待する無意味さを指摘したうえで、「関係国首脳は、北朝鮮との取引も検討するべきだ」との指摘も出ている。

北朝鮮の弾道ミサイル開発の年表と、弾道ミサイルとロケットの軌道のイメージ図と、北朝鮮が保有するミサイルの弾頭重量と射程距離の図

中国はさらに制裁を強める余地がある、とするアメリカと、関係国が刺激しあうことは避けるべき、とする中国の駆け引きのイメージ。3月の国連安保理決議の「抜け穴」(北朝鮮からの石炭や鉄、鉄鉱石の輸入禁止について核・ミサイル開発に無関係な場合など)がどうなるのか?のイメージ
どちらも(C)朝日新聞社

石田耕一郎さんの写真
解説者
いしこういちろう
朝日新聞国際報道部

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