朝日中高生新聞
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核兵器禁止条約、交渉の開始が決まる

2016年11月27日付

 国連総会の第1委員会で「核兵器禁止(核禁)条約」の来年3月からの交渉開始が、123カ国の賛成多数で事実上決まった。だが、日本は被爆国でありながら反対した。背景には、北朝鮮が核実験などを繰り返す中、米国の核兵器が日本を守っているという考え方がある。

北朝鮮情勢をにらみ、日本は交渉に反対

アメリカの「核の傘」から出られない

 核兵器は、毒ガスなどの化学兵器や、生物兵器などと同じ大量破壊兵器の一つ。だが、化学兵器や生物兵器と違って国際条約などで禁止されていない。将来の「核兵器禁止条約」は、核兵器の使用や製造、保有などを禁止するとみられるが、内容は来年の交渉において決められていく。
 核兵器をもつことは、1970年発効の「核不拡散条約」(NPT)で、米国、ソ連(ロシアが継承)、英国、フランス、中国の5カ国のみに認められ、日本などには認められていない。将来の核禁条約は、核保有国や、イスラエルやインド、パキスタン、北朝鮮という「事実上の核保有国」の核兵器を最優先の対象にするとみられる。だが、核保有国は核禁条約の交渉に応じず、禁止のルールに一切従わない構えだ。
 核禁条約の交渉開始決定に日本やドイツなどはあわてている。米国の核兵器からなる「核の傘」の下に入って、他国からの核攻撃をおさえ込む(抑止)政策をとっているからだ。
 日本のとし軍縮大使は今年2月、「いくつか(の国々)が核兵器の法的禁止に向けた即時の交渉開始を提案しているが、現在の安全保障環境を見渡せば、我々はそういう法的な手段の協議を核保有国を交えて始める段階にはまだ至っていない」と発言した。
 この「現在の安全保障環境」とは、北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を続けている現状のことだ。「核の傘」の下に入ることは、「もしも核攻撃を受けたら、米国が代わりに核兵器でやり返す」ことを他国に示すことを意味する。その手段の一つである、非常時に米国の核兵器を自国に持ち込ませることが禁止されてしまったら、他国による日本に対する核攻撃を十分に抑止できなくなってしまうのではないか、といった不安を生む。これが日本の反対投票につながった。

抑止力を認める限り、惨事は消えない

「核兵器=悪」で廃絶の流れを加速

 一方、核禁条約を推進するメキシコやオーストリアといった国々は、核兵器による抑止という現状の維持を非難する。核弾頭は今なお、米ロを中心に、1万5千発以上があるとされる。もしも、核兵器が使われたら広島と長崎で経験したような大惨事になり、被爆地の人々に後々まで悪影響が残る。
 核保有国政府が核禁条約やそのルールを無視しようとしても、法的に禁止して「核兵器=悪いこと」と汚名を着せれば、核廃絶に向けた核軍縮の流れを加速させる効果が期待できるという。そのためには、核禁条約がどのような内容になるかが重要だ。

核兵器禁止条約をめぐる構図の図

国連総会第1委員会の議場の日本政府代表団の写真
国連総会第1委員会の議場の日本政府代表団。前列右から3人目が佐野利男軍縮大使=10月13日、ニューヨーク
どちらも(C)朝日新聞社

松尾一郎さんの写真
解説者
まついちろう
朝日新聞ジュネーブ特派員

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