朝日中高生新聞
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自民党総裁の任期延長、「1強」の安倍首相

2017年4月2日付

 自民党は3月5日、党のトップである総裁の任期の延長を決めた。自民が衆議院議員選挙で勝ち続ければ、しんぞう首相は、2021年まで首相を務める可能性がある。他の政党もあるし、他の政治家もいるのになぜ、安倍首相だけが強いのか。「1強」の背景を探る。

来年9月の総裁選で3選なら2021年まで

史上最長の首相となる可能性

 自民党総裁の任期は1期3年。これまで連続して2期6年までしか務められなかった党の規則を3月の党大会で連続して3期9年まで務められるようにした。
 来年9月の総裁選で安倍首相が3選を果たし、衆院選で自民が勝ち続ければ、2021年まで安倍首相の可能性がある。06~07年の第1次安倍政権と合わせて、10年近く首相を務めることになり、明治から大正にかけて3度、首相を務めたかつらろうを超えて、史上最長の首相となる。
 かつての自民には、首相のほかにも、首相と同じぐらい力がある政治家がいた。その時の首相を追い落として、自分が首相になろうして、党内で激しい対立になることもあった。
 今も、安倍首相に批判的ないししげる・前地方創生相が来年9月の総裁選に立候補の意欲を示しているが、党内に石破氏への支持が広がる雰囲気はない。安倍首相を追い落とす力のある政治家が自民に見当たらない。
 一方、野党も力がない。3月の朝日新聞の世論調査では、自民の支持率は37%。野党で最も国会議員が多い民進党は8%しかなく、自民1強の状態だ。
 こうしたことを背景に、安倍首相は悲願の憲法改正も視野に21年までの政権運営を進めている。

党内に異論がなくなり、国政選挙で4連勝

衆院の小選挙区制と解散権が力の源

 自民1強、安倍1強。二つの1強の背景には1990年代の改革がある。
 89年に旧ソ連など社会主義陣営と、アメリカ(米国)など資本主義陣営がにらみあった「冷戦」が終わった。冷戦期、日本は米国に従っていれば良く、強いリーダーは必要なかった。
 冷戦が終わり、国際社会の秩序が乱れると、日本も米国に従うだけではうまくいかなくなった。そこで、早くて強い決断ができるリーダーが必要になった。
 その強いリーダーを作るための改革の一つが衆院選を小選挙区にしたことだ。一つの選挙区から1人しか衆院議員になれない。政党の候補になるためには党首から公認をもらわなければならなくなり、党首の力が強まった。
 今、安倍首相に逆らうと、次の選挙で、自民の候補になれないため、なかなか逆らえない。こうして党内に安倍首相への異論がなくなった。安倍首相は2012年に自民党総裁に復帰して以来、衆参の国政選挙で4連勝して、野党にすきを与えていない。
 また、首相には衆院を解散する権利がある。つまり、首相はいつでも、自分が都合がいい時に、衆院議員のクビを切れる。この解散権も首相の力を高める元になっている。

自民党大会で万歳三唱する安倍晋三総裁らの写真
自民党大会で万歳三唱する安倍晋三総裁(中央)ら=3月5日、東京都港区

安倍首相の衆院解散・憲法改正戦略の表
どちらも(C)朝日新聞社

蔵前勝久記者の写真
解説者
くらまえかつひさ
朝日新聞政治部記者

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