朝日中高生新聞
  • 日曜日発行/20~24ページ
  • 月ぎめ967(税込み)

NEWS WATCHER

巨大企業・東芝の経営が傾く

2017年5月7日付

 日本を代表する電機メーカーの東芝が、経営危機に陥っている。米国での原発事業に失敗し、1兆円を超える大赤字を出すことになりそうだ。危機を乗り越えるため、大切な事業を切り売りしなくてはならず、会社の立て直しにはたくさんのハードルが待ち受けている。

福島の原発事故後も建設目標を変えず

きっかけは米国での原発事業の失敗

 東芝は約140年前に前身の会社が設立され、世界初のノートパソコンやDVDプレーヤーなどを生み出してきた。テレビなどの身近な家電製品だけでなく、発電所やエレベーター、スマートフォンなどに入っている記憶装置「半導体メモリー」も手がけ、東京電力福島第一原発の廃炉作業も担っている。グループの社員は世界で16万人もいる。
 そんな巨大な会社が傾きかけるきっかけになったのが、海外での原発事業だ。
 もともと東芝は国内で原発を建設してきた。地球温暖化の問題が大きくなり、2000年代、発電時に温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど出さない原発が世界的にもてはやされた。「原子力ルネサンス」と呼ばれた。東芝はもうけるチャンスと考え、06年に世界有数の米原発会社ウェスチングハウス(WH)を約6千億円で買った。
 東芝の子会社になったWHは、中国や米国で新たな原発建設を進めた。だが、11年に福島第一原発事故が発生し、新たに造るのが難しくなった。原発から手を引く会社もあるなかで、東芝は多くの原発を造る目標を変えなかった。

昨年度の赤字は1兆円超? 株式市場から退場の恐れ

危機回避へ大切な事業を切り売り

 昨年12月、WHが米国で進める2兆円ほどの原発建設事業で、予想より7千億円も多く工事に金がかかり、親会社である東芝の損失となることが突然、発覚した。将来こうした損失が大きく膨らまないように、今年3月にWHを破産させた。東芝はWHの借金を肩代わりする責任があり、昨年度は1兆円を超える大赤字になる見通しだ。
 この損失を埋めるため、「半導体メモリー」事業を売ることにした。もうけの7割を稼ぐ「とらの子」だったが、ほかに打つ手がなかった。東芝はうりは「少なくとも2兆円」と言い、米国や台湾の会社などから、高く買ってくれる会社を選んでいる。来年3月までに穴埋めできないと、株を売り買いしている株式市場(証券取引所)から退場させられる。東芝にお金を出している株主は40万人もいる。
 ほかにも、大きな問題を抱えている。株式市場に上場している会社は3カ月に1回、経営の成績表である「決算」を発表しなければならないが、東芝は発表を2月から2回延期した。決算内容が正しいかをチェックする「監査法人」から、おすみきをもらえなかったためだ。3度目の延期が認められず、期限内に決算書類を提出できない場合も株式市場からの退場となるので、お墨付きがないまま4月に決算を発表した。5月半ばには次の決算発表の期限が来るが、お墨付きをもらえるかは分からない。

昨年4~12月期決算を2カ月遅れで発表したことを受け、記者会見を開いた東芝の網川智社長の写真
昨年4~12月期決算を2カ月遅れで発表したことを受け、記者会見を開いた東芝の綱川智社長=4月11日、東京都港区
どちらも(C)朝日新聞社

東芝の事業縮小の見通しのグラフ

川田俊男記者の写真
■解説者
かわとし
朝日新聞経済部記者

関連記事

最新の記事

    記事の一部は朝日新聞社の提供です。

    • 朝学ギフト

    トップへ戻る