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2017年6月4日付
女性の皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」をつくるべきかどうか。秋篠宮家の長女眞子さま(25)が婚約の準備を進めていることが明らかになり、再び議論が活発になってきた。現在14人いる女性皇族のうち、6人が20~30代の独身。議論は待ったなしだ。
現在、30代以下の皇族は8人いるが、秋篠宮家の長男悠仁さま(10)以外はすべて女性だ。皇室のあり方について定めた法律「皇室典範」は、女性皇族が一般男性と結婚すれば皇籍を離れるとしている。今のままでは、悠仁さまが即位するころには皇族がゼロになると心配する声もある。
2011年秋、皇族を支える宮内庁の羽毛田信吾長官(当時)が、民主党の野田佳彦首相(同)に「女性皇族の多くが結婚年齢に近くなっている」として、皇族の減少が「火急の案件」だと訴えた。
これを受け、野田政権は12年2月から7月にかけて12人の有識者からヒアリングを実施。「女性宮家」創設を柱とする皇室典範の改正を目指した。
だが、12年10月に野田内閣が公表した論点整理は(1)女性宮家を創設して結婚後も皇族として残ってもらう案と、(2)国家公務員にして公務に携わってもらう案の両論を併記し、結論を先送りした。女性宮家をつくると、女系天皇(母方に天皇の血筋を引く天皇)を認める議論につながるとして、反対論があったためだ。
その2カ月後、自民党との政権交代が起き、安倍政権になると女性宮家の検討はストップした。
女性皇族の日常が報道されることは少ないが、活動は幅広く、皇室が長く担ってきた公務を継承している。眞子さまは伝統工芸の技術育成を進める日本工芸会の第3代総裁で、初代総裁の高松宮さま、2代目の桂宮さまの後を継いだ。
「皇室の中で女性が果たしてきた役割については、私は有形無形に大きなものがあったのではないかと思います」。天皇陛下は2005年の会見でそう語った。
神戸女学院大学准教授の河西秀哉さんは、皇室の活動を維持するためには「男性皇族方が少ない現状では、やはり女性皇族方の役割が重要になってくるのでは」とみる。
昨年8月に天皇陛下が退位の意向をにじませるお気持ちを表明した。政府は有識者会議を立ち上げて退位や皇室の今後について議論してきたが、女性宮家の是非に踏み込むことはなかった。今回、眞子さまが婚約することがわかり、皇族が実際に減ってしまうことになることから、女性宮家が再び注目されだした。
宮内庁関係者は「女性の皇族は結婚で民間に出ることを前提に育てられてきた。(女性宮家がどうなるか決まらないままだと)人生の選択が難しくなってしまう」とし、議論が深まることを求めている。
「新年祝賀の儀」に臨む女性皇族方=2015年1月1日、皇居・宮殿「松の間」
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
島康彦
朝日新聞社会部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。