朝日中高生新聞
  • 日曜日発行/20~24ページ
  • 月ぎめ967(税込み)

1面の記事から

選挙戦はチームプレー

2017年10月22日付

衆院選の現場を見る

 衆議院議員選挙は22日に投開票日を迎えます。小選挙区と比例代表合わせて1180人の立候補者は、1票でも多くの票を集めようと、12日間の選挙運動を戦います。選挙運動の現場ではどんなことをしているのか、朝中高特派員が、東京都内のある選挙区を取材しました。(松村大行)

スタッフ 候補者の休憩中も車で回る
仲間の政治家 応援に贈る「祈 必勝」の紙

 取材は休日の朝7時過ぎ、住宅街に近い駅前で候補者があいさつする場面から始めました。行き交う人に「いってらっしゃい」、小さな子どものいる家族連れには近づいていって声をかけます。そばにはおそろいの色のジャンパーを着たスタッフが立ち、ビラを手渡す連携プレーです。
 さっと通り過ぎる人が多いものの、時折、握手を求める人がいました。この候補者と握手をした時、手がすべすべなのが気になりました。聞いたところ、特にケアはしていないそうですが、「そうしたことや目つき、声の調子など、五感で感じ取れることを直接会って知ってもらうのが大切」と話しました。
 選挙事務所をたずねると、秘書や同じ党の市議会議員、事務作業を手伝うボランティアの人がいました。訪れる人にお茶を出す時は、ペットボトルを渡すのではなく、必ず紙コップに注いで出すそうです。公職選挙法では、金銭や物品を渡して票を得る行為を厳しく規制しているためです。
 壁には「祈 必勝」と書かれた紙が貼ってありました。その横に「○○候補のため」と書かれているので「為書き」と呼ばれます。仲の良い政治家同士で贈り合うことが多く、「学校を卒業する時に書く寄せ書きのようなもの」だそうです。
 神棚や大きなだるまも置かれています。だるまは左目だけぬられていて、当選後に右目を入れます。いろいろとげんを担いでいました。
 選挙戦に欠かせないのが選挙カー。小選挙区の立候補者が使えるのは1台だけで、候補者が食事で休憩中も、車は走りっぱなしといいます。
 事務所の人によると、選挙が近いという情報をつかんだら、まず車の確保に走ります。演説の台を設置できて、手を振るために窓を全開にできる車種は限られ、取り合いになるからです。全国一斉に選挙をする衆院選では特に競争が激化。東京の選挙区で、関西や東北のナンバープレートがついた選挙カーが走ることも珍しくないそうです。
 選挙カーは毎日違うコースを走ります。選挙期間中に選挙区の隅々まで回れるよう、すでに通ったルートを地図に書き込んでいきます。夕方の買い物時にはスーパーに、給料日にはデパートのそばを走るなど、作戦を立てています。

駅前の演説をチェックする特派員の写真
駅前での演説の様子をチェック

当選後に右目をぬるだるまの写真
当選したら、だるまの右目をぬります

党の旗が掲げられている写真
党の旗を高く掲げて「桃太郎」

選挙カーの写真
大きなスピーカーや演説する台を載せた選挙カー=すべて東京都内
写真の一部を加工しています

有権者との「対話の場」

 たくさんの人が集まる駅のロータリーでは、ある党首と立候補者の演説が行われました。演説開始の1時間以上前から選挙カーを止め、スピーカーで予告の音声を流しています。注目の演説で、テレビカメラもたくさん集まっていました。
 力強い声で応援演説を終えた党首は、選挙カーから降り、観衆の中へ。応援の声を受けたり、握手をしたりします。すぐそばではスタッフの人が党の旗を高く掲げます。その姿から通称「桃太郎」と呼ばれる選挙運動の方法です。
 話を聞いた候補者は、選挙を「有権者との対話」と表現しました。「国会の会期中は家から国会に行き、ある程度決まった人と会うことが多い。選挙中は毎日いろんな人に会えて、街の様子も分かって楽しい」
 公職選挙法が定める禁止事項にとらわれず、もう少し自由な選挙運動をしたいとも思う、と明かしました。例えば日本と同じく小選挙区制を取り入れている英国では、日本では選挙期間中に限らず禁止される各家庭への訪問(戸別訪問)ができます。この候補者も、日本で解禁されれば積極的に取り組みたいそうです。一方で「当選して国会で仕事をしている間、(次の選挙に向けて)相手の候補者が地元で戸別訪問をしているのではと気になってしまうかも」という心配もあるといいます。

ライブのような熱気
■取材を終えて

 立候補者も大変だけど、ボランティアや事務所のスタッフの綿密で地道な支えがあって、みんなで力を合わせて選挙運動をしていると分かりました。
 街頭演説にはかなりたくさんの人が集まり、関心の高さに驚きました。街頭の人たちも、声をかけたり、応援していたりして、ライブのコンサートのような熱気を感じました。

関連記事

最新の記事

    記事の一部は朝日新聞社の提供です。

    • 朝学ギフト

    トップへ戻る