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2020年2月16日付
自分たちが暮らす村を気候変動から守りたいと、立ち上がった高校生が長野県白馬村にいます。彼らの取り組みが追い風となり、昨年12月4日に村が地球温暖化対策への取り組みを表明する「気候非常事態宣言」を出すなど、大きな動きにつながっています。(佐藤美咲)
「大好きな雪がずっと降りつづきますように!」「100年後も最高の雪を白馬に!」
白馬村のスキー場「白馬岩岳スノーフィールド」で2日、ゲレンデを滑りながら気候変動の危機を訴える「グローバル気候マーチ」が行われました。企画したのは、県白馬高校2年の3人です。
マーチは午前と午後の2回実施。子どもから大人まで約120人が参加しました。参加者はそれぞれ気候変動への思いを書いたプラカードを手に、滑り降りました。
白馬村は良質な雪が降ることで知られ、スキーやスノーボードなどを楽しむために国内外から多くの人が訪れます。しかし、今シーズンは暖冬の影響を受けました。昨年12月29日の白馬岩岳スノーフィールドの積雪量は、平年に比べて70センチ少ない30センチでした。前年より8日も遅れた翌30日にオープンしました。
マーチの前に、メンバーは「雪が少ないことと気候変動をつなげて考えてほしい」と参加者に訴えました。
白馬村に住む鴨志田梓さん(33)は、SNSで今回のイベントを知り、2歳の子どもとマーチを見守りました。「村に長く住んでいる方も、今までにないくらい雪が少ないと言っている。高校生ががんばっているんだから、大人もがんばらないと」と話します。
気候変動に対する思いを書いたプラカードを手にする参加者たち
長野県白馬高校2年の3人は、白馬で持続可能な地域づくりを考える団体「Hakuba SDGsLab」のメンバーです。これまで、村内での気候マーチや、村に地球温暖化対策への取り組みを表明する「気候非常事態宣言」を出すよう呼びかける活動をしてきました。
国連が2030年までに達成を目指す「SDGs(持続可能な開発目標)」について、3人が知ったのは昨年6月。きっかけは、学校関係者の知り合いにSDGsの活動に取り組む人がいたことです。Hakuba SDGs Labが設立されると聞いて、参加しました。Aさんは「高1のころから白馬に降る雪が少なくなっているのを感じていた。何とかしたいと思った」と話します。
活動を始めたとき、日本では、気候非常事態宣言を出している自治体はありませんでした。昨年9月、長崎県壱岐市が国内の自治体として初めて宣言。現在、神奈川県鎌倉市や白馬村、長野県などが出しています。
「当初は白馬が先頭を切るぞ、という思いだった」とBさん。SDGsの勉強会などに参加して、知識をつけていきました。
世界中で気候マーチが開催された昨年9月20日、村に気候非常事態宣言を求める署名活動と気候マーチを実施。11月末には、気候変動による難民のためのチャリティーバザーと2回目の署名活動をしました。2回とも署名を村長に手渡し、気候非常事態宣言を出すよう求めました。
3人の思いがかなったのは12月4日。白馬村が気候非常事態宣言を出しました。「2050年における再生可能エネルギー自給率100%を目指す」ことなどに取り組むとしています。
その知らせを授業中、先生から聞いたCさんは「出してくれるか不安だったから、うれしかった」と振り返ります。白馬村役場の担当者は「これまでも温暖化対策などは議論には挙がっていたが、高校生の若い力が大きなきっかけとなった」と話します。
毎年、スキーやスノーボードを楽しむ3人。活動当初から「白馬村のパウダースノーを守ろう」という目標を掲げてきました。今回のスキー場でのマーチは、スキー場を運営する白馬観光開発に企画を提案し、実現させたものです。
3人は「小さな行動が大きな行動につながった。今シーズン中にもう1回、スキー場でマーチをして気候変動の問題を訴えたい」と意気込みます。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。