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2015年12月27日付
ネット上でたくさんの人たちとつながるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を勉強や研究に生かす動きが広がっています。学校の友達や先生以外の人からの励ましやアドバイスで学びが深まる、と利用者は話します。(編集委員・吉田由紀)
空気の力で重いものを楽に持ち上げるパワーアシストスーツの開発、LINEの「既読無視」がストレスを与えるかを唾液中の物質測定で検証した研究、宇宙エレベーターでの修学旅行を英語で提案するプレゼンテーション――。これらは、「第1回中高生研究発表コンテスト ディスカバリー大賞2015」に選ばれた作品です。中高生の学び合いをテーマに今年8月にスタートしたSNS「THINKERS」で、高校生が発表した研究の中から、特に優秀だとされました。
現在、小5~高3の約400人が登録。研究や作品を発表し、興味が同じ仲間と情報交換したり、企業や大学の研究者らからアドバイスをもらったり。登録にお金はかかりません。
山口県の中1男子は顕微鏡を高倍率に改造し、ミクロの世界を撮影した作品をアップ。好きな小説を古文に訳していると発表した高校生には、古文で作品を執筆する高校生が返答を寄せました。
「ネット上で発表することで、理解者を見つけたり、伝える力を向上させたりして学びを深める場を作りたかった」と、THINKERSの山内学代表は言います。
LINEとストレスの研究でディスカバリー大賞に選ばれた高橋英礼奈さん(東京・玉川学園高等部2年)は「被験者は男子も入れた方がいい、と研究者からアドバイスをもらい、SNSで広がるすごさを感じました」。
THINKERSを「研究発表型」とするなら、2012年から始まった「スタディプラス」は、学習記録を共有して励まし合う「学習管理型」といえます。利用は無料。自分の使っている教材や勉強した時間を入力し、グラフ化します。教材や志望校が同じ人と情報交換もでき、やる気につなげます。
スタディプラスの廣瀬高志代表は「学力を上げるには、自分で勉強することが大事。そこをサポートするために始めました」。主に口コミで増え、現在は約140万人。その約半数が高校生、中学生は約7%といいます。
不特定多数の人とつながるSNSは、安全面も気になります。THINKERSは登録条件を紹介やイベント出席者などに限り、直接メッセージを送り合えません。スタディプラスは、メッセージの内容や画像をチェックし、不適切なものは削除しているといいます。
中高生のインターネット利用に詳しい千葉大学教育学部の藤川大祐教授は、SNSを活用した学びは「研究者の学術的なつながりのためにできたインターネットの、本来の価値をうまく生かした使い方」と言います。「ただし、世の中には中高生を性的な対象にしたりお金を取ろうとしたりする人もいる。リスクを理解し、細心の注意を払うことが必要。まず1対1で会わない。複数で会う場合も保護者に事前に伝えることが最低限必要でしょう」
「宇宙エレベーターで修学旅行」をプレゼンする高校2年生。「プレゼンは初めてでしたが、動画を発表すると見た人からほめてもらってやる気が出ました」
勉強した時間や教材などを記録し、励まし合ってやる気を出すSNS「スタディプラス」の画面イメージ
記事の一部は朝日新聞社の提供です。