朝日中高生新聞
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「天才ロッククライマー」は15歳

2016年4月10日付

白石阿島さん(米ニューヨーク在住・高1)

 2020年の東京五輪で追加競技の候補にもなり、人気が高まるスポーツ、ロッククライミング。「天才」と呼ばれ、世界的に注目を集める15歳の女子選手がいます。米ニューヨーク在住のしらいししまさんです。先月下旬、宮崎県のべおか市内の岩場で記録的な成果を出し、ファンを驚かせました。夢は「東京オリンピックに出場すること」といいます。(今井尚)

夢の東京五輪へ よじ登る

落ちたら立ち上がる「人生とつながる」

 生まれも育ちもニューヨーク。両親は日本人ですが、日本語よりも英語が得意な高校1年生(日本の中3と同級生)です。
 室内外の岩や壁を登るロッククライミングの選手として、米大手新聞に取材されたり、スポンサーがついたりしています。昨年は雑誌「TIMEタイム」が選ぶ「最も影響力のある10代2015」に、ノーベル平和賞を受賞したパキスタン出身のマララ・ユスフザイさん(18)らと並んで紹介されました。
 先月、白石さんは延岡市のえい山周辺の岩場を訪れました。昨年12月に挑戦したものの、ついに登れず、涙を流した岩に再び挑むためです。「どうしても、また来なきゃと思っていた」と春休みに来日しました。
 ロッククライミングの一種「ボルダリング」では、ロープを使わず低い岩や人工の壁を登ります。今回の岩はトンネル状に大きな穴があいていて、天井部分にコウモリのようにぶら下がり、横に移動しながら登るルートです。「ほとんどさかさま状態。しかも長い。持久力も精神力も必要です」
 挑戦3日目。岩が少しぬれていて状態が悪いなか、ついに登り切りました。ボルダリングではルートごとにV0~V16と難易度が示されます。今回のルートはV15で、世界最難の一歩手前。その日はまだ14歳。V15を登ったのは世界最年少記録で、女性では初とみられます。「自分でもびっくりしていて、もちろんすごくうれしい」
 6歳のころ、ニューヨークのセントラルパークで高さ数メートルの岩を登ったのがきっかけでした。「体の動かし方が面白く、まるでダンスしているみたい。すっかり夢中になってしまいました」
 練習用のジムに通い、めきめきと腕をあげました。8歳でボルダリングのV10を達成。米国で名前が知られるようになりました。
 上達には「集中」が大切という白石さん。「集中すれば、たとえできなくても、どんどん近づくことができるし、いつかできる」と話します。
 落ちたら立ち上がり、またやってみる。クライミングは「人生とつながっていると思う」。
 「阿島」という名前はお父さんの故郷、愛媛県にある地名が由来。日本の精神を受け継いでほしいという願いが込められています。
 スポーツクライミングが東京五輪の競技に追加されるかどうかは、8月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で決まります。
 夢は日本で開かれる五輪に出ること。いつか「世界で一番強いクライマーになりたい」と話します。

白石阿島さんの写真
「夢は日本でオリンピックに出ること」と話す白石阿島さん=3月27日、今井尚撮影

ボルダリングの特徴と白石さんの歩み
ボルダリングの特徴と白石さんの歩みの図

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