国際編;坂尻信義記者(朝日新聞外報部)
アメリカが戦闘機やミサイルでアフガニスタンを攻撃したね。
9月に起きた同時多発テロ事件の「仕返し」なんだ。
なぜ、アフガニスタンを?
アメリカが事件の容疑者とみているオサマ・ビンラディン氏を、アフガニスタンを支配しているタリバーン政権が、かくまっている、といわれているからさ。
テレビを見たら、まるで戦争じゃない。こわいな。
アメリカは、すべての「テロリスト」たちが敵だといっている。
ビンラディンという人も、タリバーン政権も、そのテロリストなの?
どちらも、「イスラム原理主義」という考え方の持ち主なんだけれど、かれらの中には、「テロ」、つまり暴力によって自分たちの考えをしめし、理想を実現しようとする人たちがいるんだ。
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アフガニスタンから家をすててにげた女性と子ども。アメリカの攻撃は、ふつうの人たちの生活もおびやかし、難民を生み出しています=となりの国パキスタンの国境近くで(撮影・朝日新聞 仙波理)
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ジャン;イスラム原理主義? ふつうのイスラム教とはちがうの?
―イスラム教は7世紀にアラビア半島で生まれ、中東から北アフリカ、東南アジアなどに広がった。信じる人たちは世界中に10億人いるともいわれる。
ケン;ずいぶん多いね。
―神であるアラーのことばをまとめた聖典「コーラン」の教えをもとに、女性はスカーフやマントを身に着けなければならない、豚肉を食べない、食事をしない月がある、などの決まりがある。
ポン;へぇー。
―でも、ふつうのイスラム教徒と「原理主義者」は、区別して考えないといけない。中東をはじめイスラム教徒が多い地域は、ヨーロッパやアメリカなど西欧の文明がおしよせ、伝統社会がくずれた。お金持ちと、まずしい人たちとの差も広がった。それに不満を感じる人たちが、イスラム教にもとづく社会にもどそうとするようになった。
ジャン;そうした人たちを原理主義者とよぶのね。
―そう。ただ、イスラム原理主義者がすべて、暴力的なやり方をするわけじゃないんだ。まずしい人たちを救う運動に力を入れているグループなどもたくさんある。
ケン;まじめなイスラム教徒たちだね。
―ところが、ごく一部だけれど、暴力を使って自分たちの考えを実現しようとするグループもある。新聞によく出てくる「イスラム過激派」といわれる人たちさ。そのひとつが「タリバーン」なんだ。旧ソ連が送りこんだ軍隊との戦いに10年近くかけて勝つと、自分たちの考えを人々にも押しつけ、極端な生活を強制するようになった。
ジャン;たとえば、どんな?
―男性はあごひげをはやし、女性には頭から足首まで布でおおうことを義務づけ、教育も受けさせない。したがわない人は逮捕されてしまう。映画やテレビ、音楽も禁止した。ことし3月には、5世紀前後につくられた世界的なバーミヤン石仏もこわしてしまった。そのうえ、ビンラディン氏のような過激派の指導者を国内でもてなしているといわれている。
ケン;イスラム過激派の人たちはアメリカと仲が悪いの?
―10年ほど前、イスラム教の国のひとつイラクがクウェートにせめこんだとき、アメリカを中心とする国々は、とてもおこり、武力でイラクを追い出した。「湾岸戦争」だ。
それなのに、アメリカと仲よしのイスラエルが、イスラム教を信じるパレスチナの人たちを追い出したり殺したりしても、アメリカはなんにもいわない。そんなのは不公平だ、つごうのいいときだけ「正義」をふりかざすなといって、アメリカをにくんでいるんだね。
ポン;ふーん。
―今回のテロ事件で、アメリカは仕返しの攻撃をつづける、と宣言している。
ジャン;アフガニスタンにくらしている人たちは、だいじょうぶかなあ。
―たしかに心配だ。そうでなくてもアフガニスタンは長い間、国土が戦場だった。生活が苦しくて、人口約1880万人のうち3分の1が難民を経験しているともいわれている。国連開発計画の発表によると、国民の7割が栄養失調で、幼児の4人にひとりは5歳の誕生日をむかえるまで生きられない、というよ。
ケン;アメリカに攻撃される前から、たいへんな目にあっている人が多いんだね。
―アメリカは攻撃の一方で、そうした人々のために食料や物資を飛行機から投げ落とすというけれど、きちんと人々に行きわたるかどうかは、だれにもわからない。また、ビンラディン氏の組織も「テロをつづける」といっている。
ジャン;心配なことだらけだわ。
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