梶原 みずほ記者(朝日新聞政治部)
ママが新聞を読んでいて、「税の負担が重くなる!」って、悲鳴をあげていたわ。
何かあったのかなあ。
自民、公明、保守の与党三党が税金をとるしくみの改正案をまとめたという記事を読んだのね。改正案に、所得税の配偶者特別控除をやめることがもりこまれたのよ。
配偶……控除……、むずかしい漢字がいっぱいだ。くわしく話してよ。
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イラスト・MAN画スタジオ(水木繁) |
ジャン 配偶者特別控除って?
―「配偶者」というのは、結婚している相手のこと。「控除」はお金を差し引くこと。配偶者特別控除とは、ジャンちゃんたちのママのように家事に専念している専業主婦や外で働いていても収入が少ない人と結婚しているお父さんなどが、かせいだお金のなかから国にはらう税金(所得税)をへらしてもらえる制度よ。その制度を2004年からなくすというの。
ポン えーっ。
―もともと控除というのは、できるだけ税金の負担を公平にするためにある。みんなの家庭や、それぞれの人の事情を考えて決めているの。専業主婦だけでなく、障害がある人や65歳以上の人のための控除もあるのよ。
ジャン でも、なぜいま、ママたちの控除がなくなるの。
―毎年、年末になると、政治家や国の役所の人たちが社会の変化にあわせて税金のしくみを見直している。「税制改正」っていうのよ。
ポン ふーん。
―いま国の財政はお金のよゆうがなくてこまっているから、少しでも負担をへらしたい。それに最近、外で働くお母さんがふえて、「専業主婦を特別あつかいするのは不公平じゃないの」っていう声もある。そういう時代のうつりかわりにあわせるというの。
ケン どれくらい負担がふえるのかなあ。
―お父さんの収入、子どもの人数や年齢によって、負担の大きさはかわる。たとえば、1.サラリーマンのお父さんの年収が700万円 2.お母さんが専業主婦 3.小学生と高校生のふたりの子どもがいる、という家庭なら、はらう税金が1年で3万円ふえるそうよ。
ジャン そういうのを「増税」っていうのよね。案がかたまるまで、反対する人はいなかったの。
―もちろん、たくさんの人が反対した。この控除を受けている人は全国で1200万人もいるから、影響は大きい。でも、控除があるために女性が専業主婦になって、社会で働くのをさまたげているのではという意見もあるの。むずかしい問題ね。
ケン ふえる税金はそれだけ?
―いいえ、来年から発泡酒やワイン、たばこの税金をふやすことが決まったわ。
ケン うわあ、そりゃ大変だ、パパはお酒が大好きなのに。お酒代がふえて、その分ぼくたちのおこづかい、へらされたらどうしよう。
―そうねえ、多くの家庭が直接、影響を受けることになるね。たばこは1本1円、発泡酒(350ミリリットル1缶)とワイン(720ミリリットル1本)は10円のアップよ。
ジャン 税金はふやされるだけなの?
―いいえ、へらされる税金もあるわ。政府は7、8年で減税分と増税分の額を同じくらいにしたいと考えている。景気が悪いいまは、会社がはらう税金をへらすなど大きな減税を先にやって、景気がよくなるのを期待しているのよ。
ポン たとえば?
―会社が研究や開発をさかんにできるように、研究費などの税金をへらすのがひとつ。個人の税金では、土地などの資産が活発に売り買いされるように、土地を買ったり株でもうけたりしたときにかかる税金などがへらされる。
ジャン でも、控除をなくしたり、お酒の税金をふやしたりして、景気はよくなるのかなあ。
―税制をかえても効果はすぐにあらわれないから、しばらくようすを見る必要がありそうね。
(02年12月24日)
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